オレンジ色の旅日記

□5歩目。
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「ユウイチ兄さん、ユウジロウ兄さん…!助けに来てくれたんだ…」


ユウキは自分の手を縛っている縄を解こうと試みる。グラエナもエーフィの側から離れた事でエーフィの呼吸は少し治まったがそれでもまだ良好とは言えない状態だった。


「エーフィ……必ず私が助けるからね…!」


ユウキの言葉遣いは忙しいのに自分を心配し構ってくる兄たちの異常な可愛がりによって心配しないでほしい、自分は大丈夫だから、女の子だから守ってやらないと、なんて言わないでほしいという気持ちで男の子のような言葉にしていたが本来自分のポケモンの前では優しい言葉遣いの女の子らしい言い方へと変わる。今のエーフィを安心させるためにこの言葉遣いを選んだのだ。


「へぇ。ユウキもポケモンの前では自分のこと私って言うんだ。」

「!?しっ、シゲ…もごっ」

「しー、助けに来たよ、ユウキ。」


ユウキはコクリと頷く。シゲルはそれを見てからそっと自分の手のひらを離す。声のトーンを落としてシゲルは話しかけた。


「ユウイチ博士とユウジロウさんが気を引いてくれている内に早くここから脱出しよう…!」

「う、うん、ありがとう…助かったよ…い、いや、僕よりエーフィを!」


縄を解いて貰ったユウキはすぐさまエーフィの閉じ込められているガラスドームへと近寄ろうとした。その瞬間、エーフィのいるドームだけが持ち上げられ、ロケット団が逃げようとした。



「ジャリボーイ&ジャリガール、大ジャリボーイ兄弟!生意気なジャリガールは無理でもこのエーフィだけは頂いていく!!」

「エーフィ!!」
「しまった!」

「オーッホッホッホ!逃げるが勝ちよ!」



ユウキたちが閉じ込められていた小屋が壊れ、ユウイチとユウジロウの姿が遠くに確認できたと同時にエーフィがさらわれた。だが、ユウキが叫んだのと瞬間、ユウキの横をシゲルのブラッキーが走り、エーフィのいるドームへと体当たりした。だがブラッキーの体が跳ねられる。


「ブラッキー!!」


ユウキがブラッキーを受け止めたがすぐにまたブラッキーはドームに体当たりを続けた。



「ほほほ!無駄よ無駄!そんなことしてもこのドームは…」

『ブラッキー!!』



ピシリと音を立てたドームをブラッキーは睨んだ。先ほどのブラッキーの体当たりでドームにヒビが入ったのだ。するとそこに向けてブラッキーはサイコキネシスを放ち、ドームを完全に壊してしまった。



「なっ、何ですってぇえ!!?」
『ブラッ!』
『フィー…!』


ブラッキーはエーフィの首根っこを加えヤマトの手から奪い返した。ユウキはエーフィを抱き締めた。



「エーフィ!」
『フィーッ♪』
「ありがとう、ブラッキー!」
『ブラッキ!』

「ぐぬぬぬぬっ!生意気なブラッキーね!お前たち!エーフィを狙うのよ!デルビル!炎の牙!」
「グラエナ!かみつく攻撃だ!」

『ガウッ!』
『グラ!』

『フィーッ!!』
「エーフィ!!」


ユウキとエーフィに向かってデルビルとグラエナが襲い掛かろうとしたその時だった。


『ブラッキー!!』

『フィ!?』

「ブラッキー!!」


シゲルのブラッキーがエーフィを庇い、ダメージを受けた。ブラッキーは少し痛そうな表情をしつつもエーフィに視線を一度やり、無事を確認するとまた前へ出た。


「いいぞブラッキー!エーフィを守るんだ!」

『ブラッ…キー!!』

『フィ…』


ユウキの足下でブラッキーを見つめるエーフィ。ユウキはエーフィに向かって話しかけた。


「…エーフィ、今のブラッキーの姿見たでしょう?キミはまだお母さんの仇の姿に怯えるの?姿だけの幻からずっと逃げるの!?」

『フィ…フィ…!』

「大丈夫、キミなら出来る。キミは僕が育てた世界一のエーフィなんだから。ブラッキーと一緒に戦おう!」


『………フィー!』



ユウキの一言でエーフィの目に強い意志が宿った。ユウキはシゲルと並んでエーフィに指示を出し始めた。



「ユウキ…トレーナーとしての腕はお手並み拝見といかせて貰うよ。」

「うん。エーフィの初バトル、負けないさ!」

「上等だよ、ブラッキー!デルビルに向かって電光石火!」


「グラエナ!エーフィに向かってもう一度かみつく攻撃だ!」
『グラ!』

「エーフィ!尻尾で空中へジャンプしてかわして!」
『フィ!』


ユウキの指示通り尻尾で空中へ高く飛び上がりグラエナの攻撃をかわすエーフィ。ユウキは続けて指示を出す。


「そのままグラエナに向かってアイアンテール!」
『フィー!』
「よ、避けろグラエナ!」
『グラぁ!』


コサブロウの指示通りグラエナがかわし、エーフィのアイアンテールは地面の岩を砕く。


「よし!外した!エーフィに向けてかみ砕く攻撃!」
『グラ!!』

「エーフィ、サイコキネシス!」
「ユウキ!悪タイプにエスパー技は通用しない…」


シゲルがそう言いかけるがユウキは不敵に微笑んでいた。



「そうだね、でも僕はグラエナたちに使えとは言ってないよ。エーフィ!」
『フィ!』


エーフィはユウキの心を読んだようにサイコキネシスを先ほどのアイアンテールで砕けた岩に向かって掛けた。


「何…!?」

「悪タイプにエスパー技は効かない。でも…エスパー技をかけたさっき砕いた岩を雨のようにぶつければどうなる!?」

「なっ!?」

「エーフィ!そのまま砕いた石をサイコキネシスで持ち上げてグラエナたちにぶつけるんだ!」

『フィー…フィーッ!』



砕いた岩を無数の石の散弾へと変え、エーフィのサイコキネシスの石の弾丸はグラエナたちにクリーンヒットした。



「あ!デルビル!」

「グラエナ!!」

「必殺!即席ストーンエッジ!」

「やるな、ユウキ!」

「ありがとう、シゲル!…さてと。悪人のおじさんおばさんたちにはご退場願いましょうか。」

「そうだね、ブラッキー!サイコキネシス!」


ブラッキーはサイコキネシスでロケット団を持ち上げる。そこへエーフィが前へ出てユウキが指示を叫んだ。



「エーフィ!アイアンテールでロケット団をユウザキ島の外までホームラン!」
『フィーッ!!』



「きゃあぁあぁあ!!覚えてなさーい!!!」
「最後までおじさん呼んだの一生恨んでやるからな生意気なジャリガール!!」
「「やな気持ちー!!」」




キラーン、と星が輝いたようにロケット団はエーフィのアイアンテールによって飛ばされた…それと同時にユウイチとユウジロウがユウキとシゲルの下へ走ってきた。




「ユウキ!!シゲルくん!無事かい!?」

「ユウイチ兄さん、ユウジロウ兄さん、ネイティ!」

『トゥートゥー!』



ユウイチの腕からネイティがユウキの腕へ飛び移った。ネイティの嘴を優しくユウキは撫でた。ユウジロウはきらきらと目を輝かせはしゃいだようにユウキに話しかける。


「すっげーな必殺即席ストーンエッジ!俺も思いつかなかったぜ!次のジム戦で使いたいぜ!」

「うぅん、エーフィが頑張ってくれたからさ。ね、エーフィ…」

『フィー♪』



ユウキは頑張ったエーフィを褒めようとエーフィに目をやると、エーフィはブラッキーに自身の体を擦り寄せていた。



「エーフィ…!?キミ、ブラッキーが平気になったの?」

『フィー♪』

『ブラ〜…///』



すっかりエーフィはブラッキーにぞっこんになっている。ユウキは屈んでエーフィをそっと抱き締めた。



「僕の大切なエーフィ。バトルも、悪タイプポケモン克服もよく頑張ったね…ありがとう、大好きだよ。」

『フィー…♪』

「ブラッキー、エーフィを助けてくれて本当にありがとう。シゲルも、兄さんたちも…助けに来てくれて、あり…がとう……///」


「「ん゛ンンッ………!!!///(僕・俺の妹の貴重なデレ可愛い…!!!)」」

「…う、うん、無事でよかった…」

「?どうしたの?」

「…ううん、キミは笑った顔が可愛いと思っただけさ。」

「はっ、はぁ!!?///変なこと言うなシゲル!」

「おやおや、オクタンみたいに真っ赤になってますなぁ兄貴!」
「ちょ、シゲルくん!妹を口説かないで!」

「別に口説かれてないよみんなバッカじゃないの!?///」


ユウキは顔を真っ赤にして怒るのであった。









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