COLOR

□二色目
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初めて空ちゃんを会議を参加させた。


今までは兄者とおついちさんの三人とスタッフ


たちだけで話を進めていたんだけど、犯人が


あの子の名前を出したことで事態は急変した。


空ちゃんが人数分のコーヒーを


淹れてくれた。空ちゃんの淹れる


コーヒー毎回美味しいんだよね。丁寧に


淹れてくれるから、すごく香りがよくて、


繊細な味わいがする、気がする。


「じゃあ、始めようか。」


「今回は改めて犯人の情報の整理と、今後の


動向の推測。それで、今回は協力者である


空ちゃんにも話を聞いてもらう。」


『よろしくお願い致します。』


「空、そんなに固くならなくても


大丈夫だぞ?」


兄者が彼女の肩を優しくさする。


空ちゃんは少し安心したように


笑みをこぼした。兄者が怪我をした時に、


俺はあの子に酷いことを言ってしまった。


“何も知らないくせに!”


それを聞いた時の空ちゃんは本当に


悲しそうな目をした。いや、俺がそういう目を


させてしまった・・・。


まだあの時のことを謝れてない。


空ちゃんと目が合わせられない。


「犯人の新しい情報は特にないけど、


僕たち三人が犯人と接触、言葉を交わした。」


「“ある方向から見れば、美しい物も、


角度を変えたり、固定概念を捨てて再び


見れば、醜い物にさえなることができる”と


あいつは言い残した。この意味の解釈が今後


の犯人の動向のカギになると思われる。」


『どういう意味、なんでしょう・・・?』


「さあ・・・、まだ分かんないな・・・。」


『何を違う方向から見るんでしょう?』


「・・・空ちゃん?」


『何かを別の考え方をしてみる、ってこと


ではないでしょうか・・・?』


空ちゃん、意外に鋭い・・・。


「その何かって、何だと思う?」


おついちさんが畳み掛ける。


『そこまでは、分かりませんが・・・。


皆さんが、当たり前だと思っていることを


考え直してみる、ということでしょうか?』


「ほう・・・・・。


当たり前に思っていること、ねえ・・・。」


兄者が考えに耽る。


「この事件を、もう一度洗い直してみる


必要があるってことなのかな?」


「俺達にそんな時間、あるのか?」


「それでも、考えることを止めたら、


あいつの思う壺だよ。」


「俺、情報洗い直すよ。」


俺に出来ることをやるしかない。


「いいのか?弟者。結構な激務だぞ?」


「うん。大丈夫。」


「じゃあ、任せたよ。弟者君。」


「じゃあ、今後の奴の動向を考えてみるか。」


確かに、次は誰があいつの標的になるかが


俺達の任務の遂行で一番重要だ。


「ターゲットになっている人達の共通点は、


昔の各省庁のトップたっだことぐらい


じゃない?順番なんてあるのかな?」


俺は、順番なんてないと思う。


『私も、順番があるのかは疑問です。』


「何でそう思うの?」


『もしも、私に憎い相手が複数いたら、


順番なんて考えませんから・・・。』


「奴の犯行がまだ復讐のためだとは


確定していないぞ。」


『・・・・・・。』


・・・・・?。


「ねえ。空ちゃん?」


『はい、弟者さん。』


「なんで、犯人が憎悪の念で動いてるって、


思ったの?」


『・・・犯人は一つの共通点しかない人達を


標的にしています。それに、先ほど頂いた


情報からみると、今まで犠牲になられた方の


御遺体は見るも無残な姿だったと・・・。


相当の憎悪があるとしか思えません。


それか、ただの愉快犯かサイコパスか。』


「うーん・・・。一理あるよね。」


「・・・賭けてみるか。」


「兄者・・・?」


「奴とまた接触したら、奴にいくつか


質問してみる。」


「答えてくれるかな?」


「分からねえ。でも、こういうのは本人に


聞いてみねえ限り分からねえままだ。」


『何を聞かれるのですか?』


「それは言えねえ。全て俺に任せてほしい。」


「・・・分かった。任せたよ、兄者君。」


『・・・・・・・。』


あ、また悲しそうな目・・・。


「空ちゃん、兄者はきっとみんなを


巻き込みたくないだけだよ。


兄者を信じよう。」


『・・・はい。』


今回の会議は、なんだかとてつもなく


気まずい雰囲気が続いていた・・・・・。
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