COLOR

□一色目
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〖ある方向から見れば、美しい物も、


角度を変えたり、固定概念を捨てて再び


見れば、醜い物にさえなることができる。〗


あいつの言葉が鮮明に俺の脳に焼きついた。


「あいつは、何が言いたいんだ・・・?」


「二人とも!空ちゃんのところに


向かおう!心配なんだ!!」


おっつんが冷静さを失った顔で言ってくる。


〖君たちの協力者、空さん、


だったかな?彼女、気を付けてね・・・〗


そうだ!空のことも知っている!!!


「行くぞ!」


無事でいてくれっ・・・!!!


一応空に電話をかけてみる。


・・・・・・・・・・・、


・・・・・・・・・・・、


『・・・・・はい、七色です・・・。』


「空かっ!?今何処だ!?」


『今、寝てました・・・。』


「事務所か!?」


『?、いいえ、自宅です。』


「戸締まりをしっかりしておけ!


あと・・・5分か10分でお前の家に行く!」


『え?急ですね・・・分かりました。』


「着いたらまた連絡する!それまで誰も


家に入れるなよ!!!」


『は、はい!』


とりあえず連絡が取れたから、今のところは


あいつは安全だ。


「空と連絡が取れた。今のところ


あいつは無事だ。」


「よかった・・・。」


「おっつんは車で空の家まで。


おい弟者、お前はどうする?」


「自分の足で行く!」


「よし。じゃあ行くぞ!」


綺麗な月の光りによって俺達の影が動き通りに


動く。そういえば、あいつも影に潜むように


していた。


形はどうであれ、影に・・・。


影・・・。しかしそれだったら、ターゲットの


影に隠れさえすれば、自由にできる・・・。


だがあいつはそれを好んではしなかった。


動く対象者に合わせて動く必要があるのか?


クソッ!今は空の安否が最優先だ。


考えるのは後だ!!


「兄者っ!あそこ!!!!」


突然、弟者が声をあげる。指さす方には、


街灯に照らされる、人。


「・・・はっ!?」


黒色の、髪の毛・・・。


あいつだっ・・・!!!!!


奴が振り向く。俺達を待っていたかのように。


そうして、美しい動作でひらひらと手を振る。


「っ!舐めやがって!!!!」


「待て!弟者あ!!!!」


弟者が仕掛けた瞬間、ふっと奴は姿を消す。


今照らされているのは、弟者だ・・・。


街灯はその一本しかなく、周りは闇だ。


周りは・・・・・闇・・・?


「・・・っ!!!!弟者!戻ってこい!!!」


「え!?」


早く!と言おうとした俺より少し早く、奴が


姿を現した。手には短刀。


「逃げろおお!!!!」


俺の声が空気を震わせ、弟者の耳の鼓膜を


振動させるのと同時に、俺の体は弟者と奴の


間に滑らせていた。


刹那、腹部に激痛が走る。


「ぐぅっ・・・!!!」


「兄者あっ!!!」


苦しいながら、あいつは少し考え込むように


小首を傾げ、そのままその形を闇に混ぜた。


「兄者!兄者!しっかりして!」


「う・・・うるせえっ・・・。


おつ、い、ちにれ、連絡して、迎え・・・!」


「もうした!だから!死ぬなよ!!」


おいおい、俺が刺されたのは腹だ。


「誰が死ぬかよ・・・!」


そのまま、俺の意識は限界を迎えた。
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