COLOR

□一色目
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パソコンの前で、コーヒーを飲みながら待つ。


犯人の動向を。


妖しい動きがあれば、すぐに現場に


駆け付けられるのように。


「おっつん。どうだ、動きは。」


「う〜ん今のところは、平和だね〜。」


そろそろ交替の時間だろうか、兄者君が


監視室に入ってきた。


今日も平和に終われそうだ。


僕はふうっと息をついた。


ッビーーーーーーーーーーーー!!!!!!!


突如、警告音が鳴り響いた。


「!?!?!?」


「奴だ!弟者起こしてくる!」


「うん!頼んだ!」


あいつ、黒の強帰先者が動き出した!


「場所はA氏邸宅!現在警備部隊が応戦中!」


「「了解!」」


二人に告げれば、すぐさま行ってしまった。


僕は長距離を走れないから、専用車で現場に


向かう。


「二人とも!状況は!!??」


「ひでえ有様だ・・・警備部隊がほぼ壊滅。


手当、対象者の保護に当たる。」


「了解!弟者君は!?」


「あいつは奴の捜索。」


「ああもう!すぐ追いかけちゃうんだから!」


「新たな情報を得るかもしれん。追わせて


やってくれ。」


「了解・・・もうすぐ僕もつくよ。」


「弟者のフォロー、頼んだ。」


「救急部隊もつれてきたから、着き次第、


三人で、捜索に移るよ!」


「了解」


そういって兄者君の無線は切れた。


彼の声色からいって戦況はかなり悪いっぽい。


車が止まる。鉄砲玉のように飛び出し、


救急部隊に指示を出し、兄者君の元へ。


「お待たせ!行こう!」


「ああ。」


急いで弟者君の元へ向かう。


「こっち〜!!!」


「奴は!?どこかに居るのか!」


「匂いはここで切れたから、この辺りに


居るのかも。」


「おい!どこに居る!!!!」


「兄者君!落ち着いて!」


暫く沈黙が続く。


〖匂いで追って来るとか、さすがワンちゃん


だねえ・・・〗


奴の声だ!といっても、変声機で変えられて


いるが。


「出て来い!!」


〖そういって素直に出てくる


馬鹿はいませんよ。このままで、ご勘弁を。〗


そいつは楽しそうに僕らと言葉を交わす。


こいつの情報がもっと欲しい。どんな些細な


ものでも構わない。僕は賭けに出る。


「・・・分かった。ただし条件がある。」


〖ほう。何かな?〗


「姿は出さなくていい。話をしたい。」


〖今更話だけで済むはずがないでしょう?〗


「そうじゃなくて!君と、話がしたいんだ!」


〖私と・・・?それはまた、何故?〗


「君の事をもっと、知りたいんだ。」


〖はあ・・・?本気で言ってるんですか?〗


「本気だよ。」


〖・・・・・っふ〗


「・・・・・・・どうかな?」


〖あっははははははは!!!はあー・・・


面白いこと言うんですねえ・・・!


久々に笑わせてらったよ!おついちさん?〗


「僕の名前、知ってるんだね・・・どこで


仕入れた情報なの?」


〖さあ?〗


「なんでこんな事するのさ?」


〖さあ?〗


「復讐のため?」


〖さあ?〗


「答えてよ!」


〖答えたら、何かあるんですか?〗


「何か、って?」


〖メリットですよ、私が情報を貴方方に提供



した場合、私には何かそれに対する対価は


あるんですかね?〗


「・・・ある。」


〖ほほう!それは何でしょう?〗


「僕らの、先祖のこと、教えてあげる。


これはトップシークレットなんだ。」


頼む。釣られてくれ・・・!


あいつはしばらく黙っている・・・。


もしかして、この賭け、勝ったのか・・・!?


〖私の事、舐めてもらっちゃいかんですよ。


その程度の情報、もう収拾済みです。〗


「っな・・・!?」


〖最初に会いに来てくれた赤色の弟者さんが


ゴールデンレトリバー、お兄さんの兄者さんが


シベリアンハスキー、貴方がメインクーン。〗


「っ・・・・・。」


〖その情報で、私のプライベートな情報を


ゲットしようなんて、浅はかですよ。


もう会話は十分ですか?では・・・、


失礼しますね。ごきげんよう。〗


「っま・・・!!!」


逃がしてしまう・・・!


「逃げんなよ。」


・・・・・この寒気はっ・・・!!!


「弟者くん!!!」


弟者くんが匂いが留まる場所にめがけて


鋭い爪を振り上げた。


〖そんなに興奮しなさんな、ワンちゃん?〗


彼の攻撃をものともせず以前あいつは楽しそう


な声色を保っている。


耳を澄ませ、どんな音も聞き逃すな・・・!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・ヵサッ。


「っ!二人とも、斜め右の茂み!!」


〖・・・・・っ!〗


「そこだっ!!!」


兄者君が仕掛ける。


〖あはは!こりゃすげえや!流石は強帰先者


なだけあるか・・・!!〗


「おらあっ!!」


〖ほっ!いいねいいねいいねえ!!!!!!


もっと!もっと仕掛けてこいよ!!!〗


「正面の灯篭の影!」


「しゃあっ!」


〖はは!あはは!あはははははは!!!!


あーっはっはっはっはっはっ!!!〗


なおも心底楽しそうに笑う。


戦力の要の二人も息を切らしている。


僕の耳も、限界を迎えそうだ・・・。


もう一回・・・賭けてみるか・・・。


「・・・どうだった?」


〖ん?何だい?〗


「強帰先者の実際の戦力までは情報収集


出来てなかったでしょ?」


〖・・・うん!すごかったねえ!でも急に


仕掛けてくるなんて、ずるーい!〗


「あはは、ごめんね。でも・・・その方が、


興奮するだろ・・・?」


〖興奮し過ぎてどうにかなっちゃいそう!〗


「喜んでもらえたようでなにより。」


〖今夜はいい夜になった。お礼に、一つ、


いいことを教えてあげる・・・〗


よし!一か八か賭けた甲斐があった!


「ほんとう?何かな?」


〖・・・君たちの協力者、空さん、


だったかな?彼女、気を付けてね・・・〗


空・・・?空ちゃんだと!?


「お前!どこでそれを・・・!!!」


〖トップシークレットの情報さえも簡単に


手に入れられる私ですよ?たかが花屋の女の


情報など、造作もないことです。〗


「気をつけろって、どういうことだ?」


「・・・兄者君・・・。」


〖おや、解釈はお任せしますよ。


シベリアンハスキーのお兄さん。では。〗


「何でこんなことするんだよ!!!!!」


弟者君が耳を塞ぎたくなるような声で問うた。


〖・・・喧しいなあ。おつむの弱い


ワンちゃんに特別にヒントを差し上げます。


・・・ある方向から見れば、美しい物も、


角度を変えたり、固定概念を捨てて再び


見れば、醜い物にさえなることができる。


ってことさ!じゃ!私はまだやり残したことが


あるから、失礼します。〗


「っ!待て!!!!」


匂いを追いかければ、奴はおらず、A氏の


亡き骸だけが転がっていた。


・・・・・また、守れなかった・・・。


その罪悪感と奴の言葉だけが


僕の心を支配した。
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