COLOR

□一色目
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兄者があいつに斬られた・・・。


俺の所為だ・・・!!!俺が何も考えずに


突っ走ったから・・・。


刺された幹部は急所を外されていたから、


命に別条はないみたいだけど、暫くは安静に


してないといけないらしい・・・。


「・・・はあ・・・・・。」


俺に出来るのは、動けない兄者の分まで


任務に励むこと・・・。


『弟者さん・・・。朝食、お持ちしました。』


空ちゃんが朝ごはんを持って


きてくれた。あの夜から、空ちゃんの


安否は確認され、花屋以外の活動は俺達の


事務所でするようになった。


「うん、ありがとう・・・。」


『元気を出してください・・・。弟者さんが


元気がないと、他の皆さんもなんだか元気が


ないようです・・・。』


「でも・・・!俺の所為で兄者が怪我を


したんだよ!?俺の所為だ・・・・・。」


あの夜の事を思い出すだけで気分が沈む。


『・・・いい加減にしてください!』


「!?」


『俺の所為だ、俺の所為だって・・・何度


言えば気が済むんですか!?』


「だって・・・!!」


『確かに貴方が行かなければ、兄者さんが


怪我をせずに済んだかもしれません。でも、


貴方が行って、兄者さんが怪我を


してしまった分、新しい情報が


手に入ったんですよね!?怪我の功名とは


申しませんが、あの夜の一件で、犯人の


全体像が手に入ったんです!今まで闇に


包まれていた犯人の姿がはっきりと確認


されたんでしょう?そして、初めて犯人と


接触した生存者も出たんです。』


「そうだけど!でも兄者が怪我をしたこと


には変わりないじゃんっ!!!」


『既に負った傷はどうにも出来ません!


だから兄者さんの怪我以上の成果を、貴方が


出せばいいじゃないですか!!』


「そんな簡単に言わないでよ!何も・・・!


なにも知らないくせにっ・・・!!!」


口に出してからひどく後悔した。


空ちゃんが何も知らないのは、単に


俺達が情報を渡してないから・・・。


言っていけないことを、言ってしまった。


空ちゃんの顔が見れない・・・。


・・・嫌な沈黙が続いた。


『ええ、確かに私は何の情報もないただの


花屋です。部外者です。』


「・・・・・・・。」


『でも、部外者だから、言えることも・・・


あるんです!』


「空ちゃん・・・?」


『その夜の一件は、ある方向から見れば、


兄者さんの負傷という事象しか見えません。


ですが、別の方向から見れば、犯人の


全体像の確認という事象が見えてきます。


兄者さんの怪我という事象だけ捉えていては


いけないんです。』


「・・・・・・・。」


『“何がいけなかったのか”ではなく、


“次はどうしてやろうか”と、考えることは


出来ませんか・・・?』


それだけ言って、空ちゃんは朝食を


置いて、俺の前から立ち去った。


「“次はどうしてやろうか”・・・か・・・」


彼女の言葉が、あの夜のことで縛られていた


俺の心を、じんわり溶かしてくれた。


「弟者君。」


「おついちさん・・・」


「ちゃんとあの子にお礼言いなよ?」


「うん。」


「彼女、泣いてたよ。」


「え・・・。」


「君の言葉が堪えたみたい。何て言ったの?」


「・・・・・何も知らないくせにって・・・」


「はあ・・・。お馬鹿。」


「ごめん・・・。」


「謝るのは僕にじゃないでしょ?さっさと


朝飯食って、謝っておいで。」


「うん。」


彼女が置いていったおにぎりを頬張る。


作ってくれたおにぎりは、俺の好きな


具材がたっぷり包まれていて、こんな所にも


あの子の優しさが溢れていた。


五月も終わりを迎える朝、頬を濡らしながら


食べたおにぎりは、一番美味しかった。


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