がらくた置き場

□はじまりから結びまでのお話
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スピンオフ!
怒ると怖い系バカップル



ずけずけ言うマンs
一年生の冬



*****



越野に呼ばれた仙道は、現在の光景に目が点になっていた。
一年生の教室の前の廊下で、○○○が凄まじい剣幕で怒っていたのである。
それはもう、仙道の想像の範疇を越えたレベルで。


「おどりゃあ、黙って聞いとりゃ付け上がりおって…。ちばける(ふざける)んもええ加減にせぇよ。」


目の前の人物は本当に○○○なのかと疑わしくなるレベルで怒っているではないか。
その凄まじさは、相手の女生徒たちが可哀想になる位に恐ろしいものであった。


「「「ひぃ…!」」」
「おい、さっきまでちゃーちゃー(下らないこと)言うとったんはどしたんなら?」


上級生の女生徒たちが○○○の逆鱗に触れたのは一目瞭然で、遠巻きに事の次第を見ていたギャラリーは女生徒たちに白い目を向けていた。


「あ?何ならその目は?言いてぇことあんるならはよぅ言えぇや。」
「「「…っ…!」」」
「○○○ちゃん、ストップストップ!」
「「「せ、仙道君!?」」」



どす黒いオーラの○○○の前に仙道は飛び出すと、その手を包み込むように握り締め顔を覗き込んだ。
すると、○○○は仙道を見て一瞬できょとりとした。


「彰君?どしたん?そんなに慌てて。」


どす黒いオーラなど最初から無かったかの様な、彼女の柔らかな空気に仙道を始め一同はホッと胸を撫で下ろした。
そして女生徒たちに向き直った仙道は、顎を掻きながら困り顔で話した。


「あー、先輩…?彼女に嫌がらせするの止めてもらっていいですか?」
「い、嫌がらせなんて…そんなっ!」
「そうよっ…ね、ねぇ!」
「う、うん!私たちはただ…。」


仙道の言葉に慌てて返す女生徒たちは、頷き合って苦笑した。
うーん、と唸った仙道は一瞬の間の後、心底鬱陶しそうな顔をして言葉を繋いだ。


「そういう''ご好意''、迷惑なんですよ。あと俺、先輩方のこと知らないんですよね。」
「「「え?」」」
「いや本当に、誰?何?ストーカーってやつ?」


声こそ穏やかだが、酷く冷めた目で女生徒たちを見る仙道に、一瞬で周囲の空気が凍った。
しかし、その空気を壊したのはギャラリーにいた女生徒の笑い声だった。


「ちょっ、サチっ。笑ったら失礼じゃん。ぶふっ!」
「エ、エリだって…ぷっくく…あの先輩達の必死さ、ヤバイって!」

「仙道も知らない人達なんだろ?怖いよな〜。」
「嫌がらせだけしてくるんだもんな。マジでストーカーじゃね。」


「「「○✕△○■◇!?」」」


口々にひそひそ話を始めたギャラリーに、女生徒たちは声にならない叫び声を上げると、一目散に廊下を去って行ったのであった。


「あれ、もう良いのかな?…もしかして、彰君に変な所見られた?」
「○○○ちゃんが怒るの初めて見た。俺、怒られないように気を付けなきゃ!」
「むっ!うちそんなに怒んないよ、彰君!」


ワイワイと盛り上がる二人の姿に、越野は遠い目をした。


「(うわぁ、コイツらとだけは絶対同じクラスになりたくねーわ。)」



淡い願いも虚しく、二年生のクラス発表で越野の叫び声を聞くこととなるのはもう少し先のお話……。





おしまい

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