-闇の花 ver.XANXUS-
□二つの炎
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己の腕の中で小さな寝息を立てて眠る少女を連れて戻ってきたのは、森の奥深くに建てられた巨大な城。
「帰った」
その一言で開く重厚な扉の先に、荘厳な城構えで彼の本拠が待ち構えていた。
ドガァアアアアアアンッ!!!
手が使えないので脚で蹴り開ける。
「ゔぉぉおおおおいっ!!遅かったじゃねぇかあぁぁ」
「お帰り、ボス♪」
「おかえりなさいませ、ザンザス様」
「なんかオマケ付きじゃん?ソイツが例の女か?」
「思ったよりも子供だね」
と、思い思いに主の帰りを労うのは、彼直属の部下であり、幹部のメンバー達。
ここは、ボンゴレ独立暗殺部隊・ヴァリアーの城であった。
「って、その子怪我してるじゃないの!手当してあげないと」
と言ったのは、特徴的なモヒカン頭でオネエなルッスーリア。
「任せる。ルッスーリア」
「もちろんよ、任せてちょうだいボス」
眠ったままの少女を渡そうとした時だった。
「…ん…」
眠っているはずの少女の手は、しっかりとザンザスの服を掴んで離さなかったのである。
「気に入られちゃったわね、ボス」
「…手当出来ねぇだろ」
「ボスがそこに座ってじっとしてくれるなら、このままでも出来るわよ?」
「………」
渋々渡すのを諦めて、いつもの座椅子にドカリと座り込む。
「しししっ。ボスにあんなベッタリくっついてられるとか、アイツなかなかじゃね?」
ソファーの背もたれに寄りかかる、目を隠すほどの前髪で、頭にはティアラを乗っけた少年・ベルフェゴールは言う。
「それに何も言わないボスも珍しいと思うけど」
と、ふよふよとベルフェゴールの横を浮かびながら言うのは、フードですっぽり全身を覆い、見えるのは口元だけ。胸にインディゴ色のおしゃぶりを下げたアルコバレーノ・マーモン。
「ボスにあれほどまで馴れ馴れしいとは…許さぬ」
「ボスさんがさせてんだからいいだろ。テメェの決めることじゃねぇ」
とまあ少女にあられもない嫉妬をしているのはモサモサとした頭にピンとしたヒゲ。背中に8本のパラボラを背負ったレヴィ。
その隣で口止めをする、銀の短髪に刀を備え付けた義手の左手。実質ヴァリアーNo.2・スクアーロ。
「それにしても、この子骨と皮って表現がぴったりなくらい痩せてるわね…」
「食ってねぇんだろうな」
「じゃあ、精の付くものを作ってあげなくちゃね」
手当も終わったらしく、ルッスーリアが少女を見つめながらそう言った。
少女は未だ眠り続けている。
「…コイツが起きて、飯を食わせたら、入隊試験を即時行う」
その言葉に一同息を飲んだ。
「ちょ、ちょっとボス、早すぎるわ!」
「マジでかよ…」
「それは流石に無茶なんじゃない?」
「むぅ…」
「本気かザンザス」
そんな彼らを他所に、淡々と話を進めていくザンザス。
「筆記は要らねぇ。実戦のみでいい。相手は…カス鮫とベル、お前らでやれ」
「マジ、俺?」
「ゔぉぉおおいっ!俺らがこのガキの相手をしろだとぉ!?」
「…なんか文句でもあんのか」
威圧的な声と、肉食獣の様な瞳で睨まれれば、流石の 暗殺のプロといえども息を呑む。それ程までに、彼の持つ殺気は恐ろしかった。
「…わかった…いいだろう」
「しししっ、りょーかいボス」
その時、眠っていた少女が目を覚ました。