好きですか?

□第6話
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「愛佳…」

目の前のその人は私に呟く。

どんどん目の前の人の顔が私に近づいて来て、もう少しで唇の距離がゼロになりそうになり、私は反射的に目を瞑る。

唇に柔らかく暖かい感触がして、キスをされたと認識すると、カァーっと顔に熱が集中する。

今、キスされた…
自分の唇を指でなぞり、ボッーとしてる私の目の前には小悪魔のように笑うあの子の姿。



ジリリリリリリリリリリ


耳元でうるさく鳴り続ける目覚まし時計の音を止め、部屋の天井を見つめる。

夢だったのか…とガッカリしたけど、いつか現実になればいいと切実に願う。

夢に出るなんて…どれだけ私、あいつのこと好きなんだよ…。

あー。
こんな夢みて普通でいられるか。

さっきの夢が頭の中でずっと流れていて、自然と頬が緩む。こんな姿をあの子が知ったら…恥ずかしい。恥ずかしすぎる。


ベットから起き上がり、冷たすぎる水で顔を洗う。

そうでもしないと、さっきの夢でのあの子がずっと出てきて、私を狂わせると思った。


あの夢を忘れたいのに、今日はずっとあの夢が再生される。

授業中もそのせいで集中出来なかった。
まあ、いつも寝てて集中していないんだけど。

私、夢はすぐ忘れる体質なはずなのにな。
いつもは楽しかった夢も怖かった夢も気づいたら忘れてるのに。

こういう夢こそ忘れて、現実に支障がないようにしたいのに。

でも、少し忘れたくないと思ってる自分がいる。

恋している自分の気持ち悪さに引きそう。


「なにニヤけてんの」

「うるさい」

「帰ろ?」

「待って」


もう放課後なんて気づかなくて、帰る準備をしてなかった。

あー本当に調子狂うから。

もう少しだけ時間ちょうだい。
なんて思ってても、あの子は待たないし、今もずっと「早く〜」とかいって、私を焦らせる。


そう、私の好きな人。
そして、夢に出てきた人。

小林由依。


気づいたら一緒に帰るようになっていた。そんな日が来るなんて思っていなかった。

ずっと喧嘩ばかりしていたから、きっと小林は私のことが嫌いだと思ってた。


私は、ずっと小林が好きだった。


多分きっとあれ。
小学生男子が好きな子にちょっかいかけちゃつような、そんな感じ。

どうにかしてでも、小林と関わりがほしくて。普通に話すだけじゃ物足りなくて。だからちょっかいかけちゃって、喧嘩になってた。

喧嘩になっても、私はそれすらも愛おしいって思ってた。むしろ、小林が敵意見せたりするの私ぐらいで“私だけ”とか呑気に浮かれていた。

もう喧嘩なんてしたくないなぁ、とか。
あれ好きな人に限って私めっちゃ冷たいじゃん、とか。

1人になると反省会が止まらなかった。

もう当たって砕けてしまおう。そんな時に見てしまった“あれ”。

実は、小林が理佐のことを好きなんて知ってた。いや、気づいてた。という方が正しいのかな。

私が目で追うのは小林。
でも、小林の視線の先にいるのは、いつも私じゃなくて理佐だった。

理佐と話してる時の笑顔、理佐と話し終わったあとの誰にも見えないようにするガッツポーズ。

そんなことが積み重なって気づいた。
小林は理佐が好きなんだ。


…もう勝ち目ないなと思った。





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