好きですか?
□第3話
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手を引かれ、辿り着いた先は近所のカフェだった。
何も私に話しかけず、メニューだけを頼んで私を見つめる。そのまっすぐすぎる視線から逃げたくなるほど、まっすぐな瞳だった。
彼女はブラックコーヒー
私はソイラテを注文した。
何も話さないこの空間に少しだけ気まずさを感じて、私は志田に話しかける。
「…なに?」
さっきの優しさにしがみついてた私が嘘のように、思ったより低い声が出て自分でも驚く。
だけど、そんな私のことなんか気にすることなく彼女は話し出す。
「なにって、そのまんまだけど」
「強がらなくていいってどういうこと?」
「それこそ、そのまんまじゃん」
一体、彼女は何を知っているのだろう。
何を考えているのだろう。
全く分からない。
だけど、いつも喧嘩してばかりの志田とこの空間に二人きりでいること自体、意味がわからない。
もしかして夢なの?
「ねえ、志田…。何を知ってるの?」
「あー。見ちゃったから。」
見ちゃったって…。
私が告白して振られたその場面を?
あの教室には私とあの人だけだったはずなのに…。
「…何を見たの?」
「小林が告白してるとこ」
「はぁ…。」
1番見られたくない相手と言っても過言じゃない。なんで見られたのだろう。
でも、あんなふうに優しくされるなんて思わなかった。
教室に忘れ物をしたから取りに戻ろうとしたら、小林と理佐がいて、入りづらい空気だったから、外で待ってたら告白だったし聞いてはいけない気がしてすぐに立ち去った。と志田は言った。
あっ…。たしかに、その次の日の授業で志田は課題を提出してなくて先生に怒られていたっけ。
「振られたのは知らなかったけどさ、それからのお前らなんか変だし。」
「なんで私が強がってるって…」
「見てたら分かるでしょ。いつも、泣くの堪えてんじゃん。」
「…」
「私なら…」
「え?」
「……いやなんでもない、。」
何を言いかけたのか、全く分からないけど、そこまで志田が観察していることに驚いた。
たしかに、あの人…理佐に冷たくされる度に下を向いて必死に涙を堪えて、笑顔を浮かばしていた。
そんな一瞬を気づくなんて。
私のことなんて何一つ興味ないと思ってた。だけど、最初に志田に気づかれるなんて。
新しい志田の一面に驚いて、思考が停止する。
少し冷たくなってしまったソイラテを混ぜて、口に流し込む。
「そろそろ出よっか。」
そういって志田が立ち上がり、レジの方へ歩き出した。
志田と2人でカフェに行くなんて思いもしなかった。
私が財布を出して、自分の分を払おうとしたら、「私が連れてきたから」そう言って志田が私の分まで払ってくれた。
なんで、志田にときめいているんだろう。
いつも喧嘩になって、苦手だった志田に。口が悪くて何を考えているか分からない志田に。
あの言葉をかけられて、優しくされて、隣を歩く志田に。
もっと甘えたくなってしまうのはなんでだろうか。
続