好きですか?

□第1話
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─────好きですか?私を好きですか?
限りなく朝に近い夜空は、星が泣いてるみたいだから…
あなたに会いたい。
ねえ会いに来て─────








放課後の教室。
2人の影だけが揺れている。


「ずっと前から好きでした…!付き合ってください。」

少しの沈黙が怖かった。
でも、自信があったから…。
次の瞬間、その自信すらも壊された。


「ごめん。好きな人がいるから」


勇気を出して、言の葉に変えた。
だけど、あっけなく散っていった。


「…そっか、そう、だよね!じゃ、それだけ!」


上手く笑えたかな?
涙を流さなかったかな?
少し気になったけど強がりを見せ、私は教室を飛び出した。

後ろで私の名前を呼ぶ声が聞こえた気がするけど、気にしない。

ただひたすら、上へ上へ走るだけ。



ガチャ


重たいドアを開けた先に広がるのは、何にも邪魔をされていない、腕をいっぱいに広げてもはみ出してしまうほど大きくて青白い空。


その空に浸っているのもこの瞬間だけで、さっきの映像が瞼の裏から離れない。



期待した分、ダメージが大きい。
なんで期待しちゃったんだろう。

絶対に成功するって思ってた。

だって…たくさん目が合うし、たくさん話しかけられるし、たくさんメッセージのやりとりだってした。

「気になってる」って言葉も嘘だったの?


明日からの学校が嫌になる。
気まずいまま、君と顔を合わせるなんて。


でも、弱い私なんて見せられないし…。


スっーーーと頬に冷たい感触がして、指でなぞる。


…涙?
あれっ、私、泣いてる?


頬を触ると雫が指について、それがきっかけとなり、それから私の涙は止まることを知らないかのように溢れ出てきた。


私って、自分で思っている以上に、君のことが好きだったんだね……。

早く、君のことを忘れて、いつも通り接しないと…だけど今回は難しそう。


ポタッ


一部だけ地面の色が変わった。
私の涙か…と思ったけど、私の涙は枯れてきている。

えっ?上を見上げると私の顔に雨が打ち付ける。

今はこの雨だけが味方。そう思えるぐらい、雨を見ると安心して、しばらくの間、私は雨に打ちつけられていた。

案の定、髪の毛はビショビショで、制服も色が変わるほど濡れていた。


ママに怒られるかな?

でも、今日の天気予報で雨なんて言ってなかったから、傘なんて持ってきてないし。


誰もいない校舎の階段を一人で降りる。
雨の音と私が階段を降りている足音だけが耳と廊下に響く。





家に帰ってきて、ママに怒られると思ったけど怒られなかった。むしろ心配された。
今はその優しさが痛いほど染みて泣きそうになっちゃったけど、泣きたくなくて、部屋に閉じこもった。

振られるシーンがずっとずっと頭の中で再生される。なんで嫌なことほどすぐ忘れられないのだろうか。


あの笑顔、隣で見たかったのにな〜。


そんなことを呟いたって、何も変わらないのに。


出来るだけ、いつも通りの私で。
君とまたお話だけでもいいから…。
君と友達でいたいと思うのは変なことじゃないよね…?


君を好きだった私、バイバイ。
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