短編。

□キャンバスに恋をして。
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今日は私の好きな人の誕生日。

私があの人を好きだなんて、誰も知らない。いや、愛佳は気づいているのかも。

でも私のグループの他の子…もんちゃんやオダナナ、尾関が知ったらびっくりすると思う。

それぐらい意外な人。

そして、仲の悪い人。



よく小学生の男の子が好きな子にどうアピールすればいいか分からなくて“イジワル”をしてしまう。それと一緒で私もよく“イジワル”をしてしまう。


普通に話すのは緊張しちゃって上手く話せないし…かといって話さない訳には行かないし…

どうしても話したい。

その結果、“イジワル”に繋がってしまう。



教室の端にいるあの子を端で見ている私。
その笑顔は遠いはずなのにとても輝いてみえてすぐに目に入る。


あ〜あ、私の隣で笑っていればいいのに。


今日は大好きなあの子の誕生日。


今日ぐらいは素直になって想いを伝えてみる?


…恥ずかしいけど。




そんなことを考えながら教室のドアを開け、自分の席に座る。


まだあの子は来てないみたいで、あの子と仲が良いゆいちゃんずの2人、原田、小池がロッカーの近くに集まってワイワイしている。


「こんな感じかな〜?」

「いいと思う!」

「さすがゆいぽん」



楽しそうだな〜と眺めていると肩をツンツンとつつかれ、誰だろうと思い振り返る。
そこには、青いヘッドホンを外している愛佳がいた。


「おはよう愛佳」

「ん。それよりさ…誕生日じゃん」

「えっ…だれが?」


やっぱり愛佳にはバレてたんだ…。
だけどなんだか素直に受け入れることが出来なくてスっとボケた振りをする。


すると、グッと愛佳が近寄って耳元に囁く。


“茜の好きな人”


その言葉が身体中に駆け巡って、カァーっと顔が赤くなり全身が熱を帯びる。


「何言ってんの!」


と愛佳の肩をバシッと叩いたけど、猫みたいに笑って「頑張って〜」と言葉をのこし、青いヘッドホンを耳にかけ自分の席へ戻っていく。












いつかは「おめでとう」という言葉と共に想いを伝えようと思ってたけど、気づいたら帰りのSHRが終わろうとしていた。



「「ありがとうございました」」



その言葉を言い終わり、ガタガタと椅子を机にしまう音と生徒が話し合う声で教室が賑わう。



言わずに今日を終えるってことは絶対したくない。


カバンを持ってあの子の席に向かう。


普段言い合いばかりしているから、私からあの子の席に向かってることにビックリしているクラスメイトの視線がすごく刺さっている。

みんな見てるんだろうなぁ。


まああの猫はケラケラ笑っているんだろうな。


ビックリしてるのはクラスメイトだけじゃなくてあの子もだったみたい。


「ねぇ…誕生日おめでとう」

「えっ、あっ、ありがとう」



あの子と普通に話したのいつぶりだろ?
なんだか緊張するなぁ。しかもみんな見てるし。


どうしよう。ここで言う?
でも振られた時の恥ずかしさは異常だ。


当たって砕けろ…か。


「あのさっ、ここじゃ言いづらいんだけど…」

「なに?」


いつもの鋭い目とは違って優しい目をするからもっと惹かれて吸い込まれそうになる。


「好き…」

「え?」

「だから…!好きなの!」


思ったよりクラスメイトの反応がなくて心配になる…。まあ意外だよね。

いつも喧嘩をしかけてる私が、告白するなんて。


「実は、私も。……おかしいよね」


なんて笑う君を抱きしめたくなった。
だけど、まだ言えてない。


「付き合って?」

「…はい」


俯いて恥ずかしそうにする姿が可愛すぎて思わず抱きしめた。


ずっとずっとこうしたかったんだ。


すると教室から拍手がたくさん聞こえてきた。

「やっとかよー!!」
「遅いよ!!」
「お似合い!」


という声が聞こえた。

…ん?やっとかよ?遅いよ?


「えっ?みんな知ってたの?」

「「バレバレ!」」


抱きしめてたあの子を離して、問いかける。


「友香も?」

「…友香。あっ、うん!気づいてた…」


思わず「友香」呼びしてしまった。
だけど、これからは「友香」って呼んで、手を繋いでもいいし、抱きついてもいいし、キスしてもいいってことだよね?


気づいてたってそんなに私分かりやすいのかな?


でも素直になれたおかげで友香と結ばれた。


素直になるって恥ずかしいことだけど、たまには悪くないかも。





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