短編。
□君がいない夜を超えられやしない。
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- 君がいない夜を超えられやしない。 -
君だけの寝息が聞こえるこの世界。
ずっとずっと溺れていたい。
────はやく、私だけのものになってよ。
隣を見たら、瞼を閉じてスゥースゥーと寝息を立てる君の横顔。
…キスをしていたいなあ。
さっきの行為を思い出しては、熱が全身を駆け巡る。
絶頂に達し、眠っている君。
胸のやわらかさとか吐息とか。
耳にまだくらいついてるし、ずっと瞼の裏で再生されている。
足を絡めて探りあてる。
心地良い二人の触れる場所を。
朝の眩しい青空と脱ぎ捨てられた下着が光る日々。
ずっとずっと続けばいいのに。
現実はそう上手くは行かない。
むしろ失敗だらけ。
そんな現実で君と熱くなれたことの方が奇跡に近いのかも。
この時間が過ぎて、24時間後…つまり明日の今頃。
その時間、君はまた違う人に抱かれているんでしょう?
「ねぇ、はやく私だけのものになって」
「私だけを映してよ」
「私はずっとねるだけを見てるのに」
背中を合わせて、そんな言葉を吐いたって君には届かない。
ただ、真っ暗な部屋に吸い込まれるだけ。
今頃君はどんな顔をして、誰の夢を見ているんだろう。
今すぐ抱きしめたい。
二日だけでいいから、ずっとこのまま抱きしめていたい。
私だけが君を好きで。
好きすぎることが嫌になる。
どんなに想ったところで、君に好かれることはない。
それなら、私を嫌いにならないで…。
ただただ、嫌われることを恐れてる。
目を閉じて夢の中に入ることは簡単だけど、瞼の裏はもう飽きるほどに、ずっとずっと君を映しているんだよ。
君は他の人を映しているんだろうけど。
ずっとずっと君だけを映していたい。
君も私だけを映していてよ。
瞼を閉じて、部屋の明るさに瞼を開けたとき、きっと君はもういないのだろう。
脱ぎ捨てられた下着もなくなっているんだろう。
それなら瞼なんか閉じずに、ずっとずっと君だけを映していたい。
瞼の下はもう寝不足みたい。
今だけ、私だけの君。
出来る限り、君だけを映していたいから…。
どうかずっとずっとそばにいてよ……。