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□あいのかたち/3
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Destiny1/M
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うちわを胸の高さでしっかり維持できる子。

挨拶の時に静かに聞いていられる子。

トロッコで側を通る時に触らない子。

だけど俺らと一緒にライブを作ってくれる子。



・・・っていうのはもちろん、大前提。

大前提としてあるけれど、俺が目を惹かれたのは

その、通じ合った時に交わした瞳なのかもしれない。




和「・・・あーあ」




ライブ終わり、ため息とともに溢れ出たニノの声に

俺らは反応するしかなく。




雅「・・・今の独り言?松潤の時みたいに反応に困るよ」

潤「いや俺にはわかるよ。聞いてほしい『あーあ』でしょ?」

和「潤くん正解」




俺の読み通りだったから、メイクを落としていた翔くんとリーダーもこちらに振り返った。




和「もうね?長い事よ?長ーい事ずっっと俺のうちわ持ってたのよ」

翔「おっと?(笑)」

和「・・・今日のライブ、相葉さんのうちわ持ってたの」

智「あーあ(笑)」

和「心変わりってやつかなぁ・・・」

雅「え〜?いや、何かごめんねっ?」




ヘラヘラ笑いながらそう言った相葉くんに

ニノは一言


「・・・うざ」


冷たい目を向けた。




デビュー当時から変わらず自分だけを応援してる子は、もちろん俺だけじゃなくみんな覚えてる。



けど何かのタイミングで持っていたうちわが変わることも少なくない。



その度に少しだけ、寂しくなったりもする。











潤「・・・あれ?あの子」




だけどその逆も然りで。




潤「前は『釣って』ってうちわ持ってたような・・・」




去年までリーダーのファンサうちわを持っていた

長い黒髪の女の子。



それが今年は誰のうちわを持つこともなく

スタンド最前列で、ただペンライトを振っていた。




いつもなら自分のうちわを持ってる子に向けて手を振るけど、

その子にはどうしていいかわからなくて。




潤「振って、みるか・・・?」




スタンドへ近づくトロッコに乗りながら

その子に目線を向けると、

花が咲いたように顔がパアッと明るくなった。




10数秒程、手を触り合っていただけなのに。

自分でも気持ち悪ぃって思うくらい

俺もニコニコ笑ってて。




潤「いや。・・・ファン。あの子は俺らのファン」




その子の前を通り過ぎながら、何度も何度も自分に言い聞かせた。
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