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□FALL/*kazunari*
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どれだけ長く通ってもご飯止まり。

お店を出たらタクシーに乗せられて

『着いたら連絡しろよ?』って言われる。



私の何がダメなの。

お金使わないと抱かないよって事?






和「・・・お前本気で言ってんの?」

「本気だよ。他の子に負けたくない」

和「だからって・・・初っ端からコレは高いって・・・」



自ら手を上げて黒服を呼んで

「ピンク1本ちょうだい」

1本10万円のドンペリピンクを注文した。



運ばれてくるシャンパンと共に私に集まる視線。

和也を担当にしてる女の子たちの

あの悔しそうな顔がなんとも言えない快感になる。



和「めい無茶すんなよ・・・でもありがとな?」



送りの時、ただタクシーに乗せられるだけじゃない。

熱く抱きしめながら、頭を撫でてくれる。



・・・やっぱり。

お金を使えば、もっと特別になれるんだね?




ただのしがないOLの私が

水商売の女の子たちと張り合う為には、

多額の貯金を下ろさなければならなかった。

でも、こんなペースでボトルを卸してたら

お金はすぐに底をつく。




和「・・・別卓行ってくるわ」

「・・・うん」




ボトルを卸せなければ和也は席に留まってくれない。

もうお金も自分で支払ってる。

特別じゃない。




和「気を付けて帰れよ?あ、帰ったら・・・」

「連絡」

和「ん。いい子」



乗り込んだタクシーを、角を曲がったところで

「ここでいいです、ごめんなさい」

1000円札を押し付けて降りた。



私なりに頑張ってお金使ってきたよ?

なんで関係性が変わらないの?

特別な女がいるからでしょう?



お店の最後のお客さんが出るであろう時間まで、ビルの影から和也を待った。



暫くすると、和也の"エース"と呼ばれるお客さんと一緒に地下から出てきた。

タクシーを止めることなく2人で朝の繁華街を歩いていく。


私も2人の後をつけて行くと、

程なくして高層マンションに辿り着いた。



「・・・っ、和也っ!」



思わず声をかけた私に、和也がため息をつく。



和「・・・なに、つけてきたの?」

「あれ?この子・・・あ!"育て"の子だぁ(笑)」



ハイブランドのバッグを持ったモデル並に綺麗な"エース"が、私を見てふふふっと笑う。



和「・・・残念。お前それはルール違反だよ?」



和也の冷たい言葉は

私をまた、地獄へ突き落とす。
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