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□虹の花/2 *satoshi*
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今まではただ

兄が無事に帰ってきますように


いつもいつも皆

あなたの帰りを心待ちにしていますと


海の向こうにいる兄へ届くよう、

祈る為だけにあの海へ向かった。



でも、智さんに出会ってからは

あの海へも心なしか足早になっていて。




毎月15日、智さんは私に会いに来てくれた。



祈り終わると同時に呼びかけられる

『めいさん』に、毎回キュッと胸が鳴る。



晴れの日には砂浜に腰を下ろして語らい

塩おむすびを持っていけば

美味しそうに食べてくれた。




雨の日には木でできたボロボロの小さい小屋で

雨漏りに濡れながら笑いあって

触れるだけの口づけを交わした。




コンコンと降る雪の日には肌を寄せ合って

智さんからの『愛してる』に酔いしれた。






会う度に、季節を追う毎に

私の恋心は少しずつ膨らんで

愛し、愛される喜びを知った。









こんな日々がずっとずっと続けばなんて

叶わない夢を見ていた。


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