short
□あいのかたち/2
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縮まらない距離4/M
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「・・・ん?なにが。どういう意味よ」
潤「めいの事が好きだって言ってんの」
「・・・はい?いや、ちょっと待ってよ」
抱きついていた俺の身体を離しためいは
冷めた目をしながらため息をついた。
「・・・タクシー拾うから。帰るよ」
潤「なんでいつもそうなんだよ・・・」
「いつもってなに?じゃあ聞くけどいつ私の事を好きになったわけ?酔った勢いでおかしな事言わないで」
潤「確かに勢い余って言っちゃったけど。・・・小3の時からずっとだよ」
かっこ悪くて、思わず手の甲で顔を覆った。
・・・彼氏と仲良くやってるって言ってたのにな。
こんなタイミングでやっと自分の気持ちを晒け出すとか、
お前が「バカじゃないの?」って言うのもわかってる。
「・・・小3からって。なんでよ。潤今まで何人の女の子と付き合った?私全部覚えてるよ?」
潤「確かに結構色んな子と付き合ったけど。・・・だってめいが彼氏とか作るんだもん。耐えらんないじゃん」
「は・・・?私が彼氏作ったからって言いたいの?」
覆っていた手をゆっくり下ろすと
案の定、めいは俺を睨んでいて。
あぁ、もう終わったなって。
幼馴染ってポジションにも居られないんだなって、体温が下がるのを感じた。
「私が転校した時、親の離婚で友達が1人もいない学校に行かされて。大人って勝手だなって思ってた」
潤「・・・うん。中学の時話してくれたよな」
「もうどうでもいいって思ってたら潤が寄り添ってくれてさ。だから同窓会に来れるくらいみんなとも仲良くなれたんだよ」
潤「・・・そうだったね」
「だから私潤に恋して、頑張って抱きついて『大好き』って言ったのに!『はいはい』って流したの誰よ!?」
思いっきり俺を睨みながら、めいが必死に涙を堪える。
潤「・・・え?だって幼馴染としての『大好き』じゃねぇの?」
「そんな軽々しい気持ちで言ってない!」
潤「はぁ!?なにそれ・・・え、いつまで俺の事好きだった?」
「勝手に過去形にしないでくれる?」
ふんって睨んだままのめいの顔に、少しだけ笑みが加わって。
下がった体温が、急激に上がるのを感じた。
潤「てことは、俺ら・・・」
「あ、待って。ちょっと電話させて?」
『俺らって両想い?』
って聞こうとした俺の言葉を遮っためいは、
スマホを取り出して操作した後、耳に当てて話し始めた。
「・・・あ、もしもし?遅くにごめん。あのさ、いきなりなんだけど別れよ?」
潤「ちょっ、お前・・・」
彼氏に電話しておもむろに別れを告げた事に驚いて
思わず声を上げると『静かにして』とめいが人差し指を唇に当てた。
「ごめん。ほんとはずっと好きだった人がいたの。私やっぱりその人の事が好きだから。だから、ごめん」
その後少しの会話をしためいは
通話終了をタップして、はぁ。と大きく息を吐いた。
「これで私はフリー。潤も今彼女いない。・・・って事は?」
ふふって笑っておいでって両手を広げためいに思いっきり抱きついて、想い続けたこの21年分の『大好き』を耳元で囁いた。
「私に着いてこれる男なんて、世の中に潤くらいだよ」
潤「・・・うざ。・・・いや、そうだけど」
「・・・ねぇ、これからはキスしてもいいの?」
甘ったるくて愛しい声。
ただの幼馴染だった時には聞かせてくれなかった言葉。
潤「キスだけじゃ済まないから」
「・・・ふふっ、楽しみ」
ねぇ、愛してるよ。
21年分の愛をぶつけるから。
覚悟してて。
end.
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