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□僕は、君を見つけた。/2 *kazunari*
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それはツアーの最終日。




ソロが終わった俺は

コンサートも中盤に差し掛かった

ダンスナンバーの最中

歌いながらムービングステージに座って

ファンの子たちに手を振っていた。








何気なく


ほんと、何気なくだった。








ふと目をやったその先に


その子はいた。







みんながメンバーそれぞれの団扇やペンライトを振って

俺たちと一体になってるこの空間に


一人、無表情のまま突っ立って

俺をジッ・・・と見ている女の子と目が合った。









何だこの女、と思った。





俺らアイドルのファンの女の子っていったら

目をキラキラ輝かせて、

枯れんばかりの声を張り上げながら

『こっち見て、私に笑って』

って団扇を振り上げる、そんな子たちばかりで。





無表情のまま俺を見る彼女は

何でここに居るんだ?って思わせるくらい

楽しんでるようには、とてもじゃないけど見えなかった。







彼女の事をずっと見ている事に気がついて

あ・・・、と目を逸らしたのは

たった数秒後の事だったけど



彼女の整った、でも化粧の薄い顔とか

巻かれる事のない、綺麗な栗色の長い髪とか

ラフすぎる服装とか。




彼女の全てが脳裏に鮮明に残ってたから

俺にはなんだかもの凄く長い時間に思えた。
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