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□FALL/*kazunari*
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「・・・育てって、なに」


小さく呟いた私に、エースが

「マジで?(笑)」呆れたように笑った。



「私みたいに高額の金を落とさせるように育てる客の事だよ。・・・ホスクラ用語知らない感じ?」



・・・なにそれ。

だって何ヶ月も和也が飲み代出してくれてたじゃん。



「あー、なんか納得してないから説明してあげなよカズ」

和「はぁ。・・・もういいや」



和也が、私を"めんどくさい女"って顔で見る。



和「オープンラストで地味に飲んでる女ってね?みんな気になるんだよ。『あの女の余裕そうな顔はなんなの』って」

「余裕そうな顔!してたしてた〜(笑)」



じゃあ、他のお客さんを焚きつける為に・・・?



和「あれくらいの額、別に俺の財布から出した所でこいつとか他の子の売上でどうとでもなるの」

「あたしは育ての客って知ってたから何も思わなかったけど、太客たちはイライラしてたもんね〜」

和「お前が勝ち誇った顔で飲んでくれたおかげで、他の客がボトル凄い卸してくれたんだよ?」




彼に裏切られた時よりも屈辱的で

目の前がクラクラする。




和「ありがとな?」



和也が私の目線まで中腰になって

にっこり笑いながら頭を撫でる。



「可哀想に。カズに抱いて欲しかったんだ?」

「・・・だって、私なりに頑張って・・・」

「あれくらいの額じゃ無理だよ(笑)」



綺麗な"エース"の顔が、私の耳元に近づく。



「"泡"に落ちたら抱いてくれるよ。私みたいにね」



ふふふって笑うその声は

天使の囁き?それとも悪魔の囁き?



和「あいつになんて言ったの」

「ん〜?イイコト、かな?」

和「ふーん。まぁいいや、帰ろ」



マンションに入ってく和也は1度も私を見なかった。







やっぱり和也はホストで、

私はただの客だった。

恋をしても報われないし

抱いて欲しいと願ったところで願いで終わる。



あの時よりも深く暗い地獄に落とされて

手を差し伸べてもらえない私は

もう地上には這い上がれなかった。








「こういうとこ、初めてなんだよね?」

「・・・はい」

「報酬が高いって事はかなりキツイ仕事ってことだよ、大丈夫?」

「・・・大丈夫です」



私はエースに言われた通り、泡に落ちた。

面接してくれた店長の言う通り、

キツくて辛くて身体もボロボロになる。

でもそれ以上に和也の側に居たかったの。










「・・・和也。久しぶり」

和「おかえり。待ってたよ?」



店の扉を開ける私に、和也が左手を差し出す。



和「"特別"に、してあげる」



end.
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