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□虹の花/3 *satoshi*
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季節が春に移る頃の15日。
いつものように
異国の地に居る兄へ思いを届ける。
もうそろそろかな・・・
智さんに
声をかけられるだろうと思っていた。
けれど、いつもの『めいさん』が聞けなくて後ろを振り向くと
砂浜に降りる石段の下で
智さんが胸をおさえ倒れていた。
「・・・っ、智さん!!」
走って智さんに近づくと
出会った時よりも荒い呼吸で
ゼェゼェと苦しそうにしていた。
額には大粒の汗が吹き出していて
手を当てると凄い熱。
「智さん!大丈夫ですか!?今、誰か呼んできますから!」
そう言って立ち上がると同時に
智さんは弱々しく私の腕を掴んだ。
智「大丈夫・・・もう少しで治まるから・・・」
「でも・・・!凄い熱ですし、お医者様に見てもらわないと!」
智「これが治まったら後で診療所行くから・・・。僕の話を聞いてくれますか・・・?」
私の目を見つめる瞳は
熱の所為でうっすらと涙が溜まって
ゆらゆらと揺れ、でも力強い。
こんなにも頑なな智さんを見るのは初めてで
堪らず首を縦に振った。