*すみません、どなたですか
□⒈遺跡の歩き方
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1つ目のパズルから数分後。私たちの目の前には子供がいた。
また人間…?
「ここでは、出会った相手があなた達を襲ってくることもあるの」
『Flowey…あの黄色い花のように?』
「…そう。その時のために準備をしておかないと」
「でも武器も持ってないし、戦えないよ」
「心配しないで、あなた達は武器を持つ必要はないの。ただ、相手とおしゃべりすればいいのよ。時間を稼いでくれたら私が仲裁しにいくわ」
まさかこの言葉が後に響くとは、初見じゃわからなかったよ…。
ところでこの子は誰?なんで人間がここに…。
「この子はDummy。この子と練習してみましょうか」
…え?
Dummyって確か日本語訳でマネキンだよね。だがどうみても人間だ。贔屓目に見ても人間だ。しかしながら人間だ…この世界の住人は、人間になっている?
Floweyは花だったのに。ハブり?仲間はずれ?ドンマイ黄色い花。
FriskがDummyに近づき、視界が黒く染まる。
《…Dummyに遭遇した》
どうやら音声形式でアナウンスが流れるようで、どこからか声が聞こえる。いきなり視界が黒く染まり、声が聞こえたので思わず周りを見回してしまった。
「Ris?何かいたの?」
『…いや、なにも。それよりその、ソウルまた出ちゃってるね』
何も浮かばない私とは別に、Friskの胸の前には真っ赤に輝くハートが浮かんでいた。あれがソウル…画面の中の景色はこう見えるのか。
「なんか勝手に出てきちゃうの…ねぇ、どうにか出ないようにできないのかな」
私は知らない。もしかしたら原作でそんな話があったかもしれないが、あいにく何年も前の記憶なので覚えていなかった。TorielさんもFriskのソウルが出ないようにする方法を知らないようだ。無言で首を傾げている。
「そっか…ところで、"Dummy?"って、何でハテナがついてるんだろう?」
『ん?Friskには何か字が見えるの?』
宙を指差すFrisk。その場には何もなかった。
「あれ、Riskyには見えないの?よくわかんないけど、文字が書かれた板が浮かんでるよ。ゲームみたい!」
FIGHTとかACT, ITEM, MERCYも書いてある…と左の方から指差している。それじゃあゲームみたいじゃなくて、ゲームそのものじゃないか。
確か原作でも同じようなボタンがあったはずだ。
もしかしたら、Friskはゲームと同じように世界を見ているのかもしれない。ボタンとかセリフとか…昔Friが描いた絵は綺麗な流線だったので、流石に見えている世界はドット絵じゃないとは思うけど。
『じゃあ、声も聞こえる?』
「声って、当たり前じゃん。聞こえなかったらRisと会話できないよ!」
『他の声は?』
「え?他に誰か話してた?聞こえなかった…どうしよう、耳悪くなったのかも」
…アナウンスはFriskに聞こえていない?
Torielさんの方に顔を向けても、怪訝な顔をされただけだった。私は幻聴でも聞いているのかな…?
「とりあえず何か選ばなきゃ!えっと…どうしよう」
『さっきTorielさんが行ってた通りにすればいいんだよ』
「さっきの……そっか、おしゃべり!てことはACT‼」
《…ATK 0、DEF 0 》
Friskが選択したことでアナウンスは続いていく。幻聴とは思えない…まるで隣から声が聞こえてるかのようにリアルだ。周囲は誰も反応してないけど。
《綿の心臓とボタンの目…だったはず。目に入れても痛くないくらい可愛い》
ACTで"調べる"を選択したようで、Dummyの詳細の音声が聞こえる。
…にしても、アナウンスの声も戸惑っているようだけど、どう見ても綿とボタンでできているようには見えない。目なんか、本物をそっくりそのまま入れたんじゃないかってくらいだ。ガラス玉でもはめ込んだんだろうか。
《Dummyは今にも倒れそうだ》
「えっと、お元気ですか!」
「…」
Dummyは黙り込んでいる。
「きょ、今日はいい天気だね」
《あなたはDummyに話しかけた…ちぐはぐな会話だ》
会話が続いていない…Friskはちょっと落ち込んでいるように見えた。
落ち込むFriskとは対照的に背後でTorielさんが喜んでいる。話しかけたことを喜んでるんだよね…?Friskが落ち込んでるから喜んでるんじゃないよね?
《あなたは勝利した!0 XPと0 GOLDを得た》
「えっくすぴー?なんだろう、これ」
「!それは…あなたにはきっと関係ないことよ、ぼうや。さぁ次へ進みましょう」
TorielさんはEXPを知っている?でも教えたくないようだ。たしか、どれだけ相手を傷つけたかの数値だった気がする…あっているかはわからないけど、とりあえずFriskのEXPが増えないことを祈ろう。
急かすようにして部屋を出て行くTorielさんとそれにつれられ出て行くFrisk。私は1人、部屋に残っていた子供…Dummyと思わしき子供に話しかけていた。