*すみません、どなたですか

□prologue
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死んでたまるか、命を燃やせぇぇえええ!!と必死に避ける。
避けるためにFriskを抱えて転がり回る私は、はたから見ると結構愉快だったのかもしれない。芋虫みたいだって笑われた。許さんズ。

とはいえ避けるのにも限界があった。所々地面で擦れ、怪我をしている私に対し、余裕綽々のFlowey。
攻撃が迫る。
くそっ、もうダメか…と思いかけたその時。


どこからか足音と声が聞こえた。
 
誰か来たのか!地面に倒れているのでよく見えないが女性の声だ。気のせいだろうか、怒っているような…?
声が聞こえた一瞬後。横から飛んできた焔の球がFloweyを吹き飛ばす。チラリと見えたFloweyは、心なしか青ざめていたように見えた。
 
そうか、次に現れるモンスターはママ!ヤギのマッマだ!モンスターペアレント!!
最後にゲームをやったのももう何年も前なので忘れていた。
 
「何をやってるの?罪もない者相手に…!」
 
焔の飛んできた方向にいたのは…
 
『に、人間ーーーーーっ⁈』
 
「え?ニンゲン…?よくわからないけど大丈夫かしら?怪我は、ああ、膝を擦りむいているわ!服も泥だらけ…まったく、年頃の女の子に!これをお食べなさい」
 
地下世界(ここ)にはいないはずの、人間が立っていた。
 
モンスターじゃない…だ、と…?
幻覚だろうか…?彼女はどこから取り出したのか、チョコレートを差し出している。ブランドものだ。
 
「Risky…大丈夫?」
 
とりあえずチョコレートを受け取ると、私が叫んだせいかFriskが怪訝な顔をしていた。
 
『私の頭は大丈夫だよ…ごめんね急に叫んで』
 
「いや頭は元から大丈夫じゃないからいいんだけど…その、チョコ」
 
従妹が塩対応でお姉さん悲しいです。
先ほどFloweyに襲われたせいで警戒している様子のFriskをよそに、封を開けてチョコレートを食べればあら不思議。
 
「け、怪我が…⁉」
 
「ここの食べ物は不思議な力があって傷を治すことができるのよ、坊や。どうやらあなたのお姉さんは知ってたみたいだけど」
 
『い、いや…まさかこんなふうに治るとは思ってなかった、です』
 
怪我はみるみるうちに、逆再生のように消え去り、膝にはかすかに血が付着しているだけだった。本当にゲームみたいに消え去るんだ…魔法の力なんだろうか?驚きのあまり敬語が抜けかけた。
相手は年上だっていうのに…って、それよりこの人は誰?このタイミングで来るのはTorielしかありえないと思うけど、目の前にいるのはどうみても人間だ。ゲームでのTorielはたしかヤギのモンスターだった。
 
『チョコレートをありがとう。私はRiskyです。あの、あなたは…?』
 
「私はToriel。今日みたいに遺跡にニンゲンが落ちてこないか見回っているのよ」
 
ヘーイ!?マッマ擬人化ッ⁉
なんてことだ…擬人化って……ここは2次創作の世界だったのか!!
でもFloweyは花だったけど、そこは変わらないのね??はたして原作通り黄色い花のFloweyとなぜか擬人化のTorielママ、どっちが例外なんだろう。
他のモンスターもニンゲンになっているのだろうか。もし人間になっていると言うならば…人間のソウルを探したり、落ちてきたニンゲンを殺したりはしていないのだろうか。
 
私やFriskが死ぬ危険性はないかも…?
 
「…ねえ、Risky!!聞いてる?」
 
あまりの衝撃に固まっているうちに、FriskとTorielさんとで自己紹介が終わっていたらしい。Friskが私を呼んでいたようだが、まったく聞いていなかった。
 
『ごめん、なに?』
 
「家に案内してくれるんだって」
 
『家?あ、マッマ…ごほんっ、Torielさんの?』
 
「マ…?うん。今日の天気予報雨だったから心配だったけど、濡れなくて済むね!」
 
『……あー、Fri。地下、というか洞窟に雨は降らないよ』
 
…雪は降るんだけどね、という言葉を飲み込んでツッコむ。しまった、と顔を赤らめ恥ずかしがる私の従妹が今日もこんなに可愛い。
 
 
 
*周囲に小さく笑い声が響く…あなたは穏やかな気持ちで満たされた。
 
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