少し長いお話

□貴女と私の秘密の関係2
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食事会を終えた日から数日後、新学期が始まってしまった。
あの日の帰り道は4人で白石さんの車に乗り、家まで送ってもらった。
後部座席の隣には白石先輩がいて、「打ち合わせと違うじゃない」と近い距離で話されたことを覚えている。

その時に感じた先輩の甘い香りとか、顔の距離の近さとかで、どうしようもなく赤面したことも覚えている。
次回の約束を前の座席の二人が仲良くしているのを聞いて、お互いにため息をついてしまった。
そんな春休みの終わりの出来事。


「七瀬、準備できた?かずみちゃん、迎えにきてるわよー」
「う、うん、今いく!」

制服のネクタイを整え、玄関に向かうと親友のかずみんがそこには立っていて、笑顔で「おはよう」と手を振ってくれた。

「なんかあっという間の2年生だね〜」
「そやね〜」
「クラス替えないから、また同じだね」
「うん!ほんまよかった」

人見知りな自分にとって、クラス替えの回数は少なければ少ない方がいい。
ただ、来年の3年生は進路の関係で、文系理系とクラスをわけるから、クラス替えがあるのだろうけど…
そんなことをぼんやりと考えながら、電車にのり、坂道を登り学校を目指す。
気づけば坂を登りきっていて、2年の玄関の前に人だかりができているのが見えた。

「なんだろね」
「ん?ん〜〜、あ、白石先輩だよ、なぁちゃん!」
「し、白石先輩…っ」

今日は在校生だけの登校日なため、周りにいるのは同級生ばかり。
当たり前か、2年生の玄関だもんね。
むしろ先輩がそこにいる方が珍しいことなのに・・・

「あっ…」
「え…」

見つめていると目があい、それと同時に指もさされた。
あ…もしかして、もしかしなくても…

「西野さん」

うちやったか…

隣にいるかずみんは、話しかけられた私を見つめて驚いている。

「白石先輩…」
「今日さ、始業式で終わるでしょ?その後、時間ある?」
「え…、は、はい」
「そう。じゃあ、また帰りの時間にここの玄関で待っているから、一緒に帰りましょう」
「えっ…、なっ…なんで」
「いいから。理由は後で話すわ」
「わ、わかりました…」

それじゃあ…と一言残すとその人は、その場を立ち去ってしまった。
颯爽と現れて、颯爽といなくなってしまった彼女の後ろ姿を見つめ、呆然としいた私に、周りはそっとしてはくれなかった。

「ね!なんでなぁちゃん、白石先輩と知り合いなの!?」

同じクラスの子達もざわざわと近寄ってきては質問をとばす。


(いや、そうなりますよね…)

なんと説明していいのかわからず、誤魔化すことに必死だった私は怪しかったのだろう。
悲しそうな表情を見せたかずみんが気になり、「今度詳しく話すな?」と小さく伝えると、微笑んでくれた。
その後も目撃していた子達から、質問をたびたび受けたが、なんか用事があるんよ〜だなんて適当な相槌に、諦めてくれたようだった。

校長の長い話を終え、始業式もあっという間に終わり、新しい担任と座席と…

(あかん…もう放課後や)

「ここの玄関で待ってるから」

あの言葉が何度も頭の中でリフレインされていく。
その度に、理由なんかだいたいわかっているはずなのに。
お互いの親のことについての話だってわかっているのに、なんだかその言葉に恥ずかしさを覚えて赤面していた。

明日の持ち物を友達と確認しながら、教室を後にする。
かずみんは心配そうな顔で見つめてきたが、ごめんねと謝り急いで玄関へと向かった。
玄関に向かう中、なんだか待たせて悪い気持ちと、早く会いたいような気持ちと二つが入り混じっていた私は、気づけば走っていて。
靴箱でローファーへと履き替えると、玄関の外で寄りかかっている先輩の後ろ姿を見つけた。

「お、お待たせしました」
「あ、きたきた。なに、走ってきたの?」

なんか急がせちゃってごめんねだなんて、優しく微笑む先輩に、ドキドキした。

「ごめんね。お父さんが、今日新学期なら七瀬ちゃんを連れてこいってうるさくて…」
「え…なんで」
「わかんないわよ。でも、もう断っても頼んだからな〜とかいって会社いっちゃうから…なんかあるんだと」
「……」

だから、今日は私の家にきてもらうからといって、駅まで案内された。
駅の方向は乃木坂駅から自分の家までと反対方向だということを知った。
電車の中ではこの間の話とは関係のない、学校の話ばかり。
始業式の話、先輩の新しいクラスの話、先生の話…
私にとってもわかる話題ばかりで、途中から少し楽しくなっていた。

「ふぅ〜ん、やっぱり西野さんも普通の女の子か」
「へ?」
「ううん、なんかこの間の食事会はさ、顔ずっと強張ってたから」
「あ…あの日は、緊張しとったから…」
「そうだよね。そして、関西弁なんだね」
「は、はい。実は小学校まで大阪におって。それで…」

一生懸命話す姿に、目の前の先輩はくすくすと微笑んでくれた。
なんかその姿が嬉しくて、こちらまで楽しい気持ちになった。
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