少し長いお話

□貴女と私の秘密の関係2
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最寄りの駅についていたようで、駅を降りて住宅街を抜け歩いていく。
しばらくすると綺麗なマンションが見えてきて、そのエントランスへと進んで行く先輩に、ここなんだと思い知らされ、自分の家との違いを感じた。
最寄りの駅も高級マンションが並ぶ駅という印象だもんな…

「さ、入って」
「すいません、お邪魔しますっ」

玄関の扉をあけると、いい匂いがして、さらにリビングへいくとあったかい雰囲気がたくさんの写真や花、綺麗に整えられている本棚…

「綺麗…」
「…そう?ありがとう。掃除しといてよかった」
「先輩が家事…そうですよね。うちも…そやけど、こんなにしてない…」
「比べるものじゃないし、あなたも色々大変だったろうし」

そう言いながら、カバンを床に置き、キッチンにたつ先輩はまるで…

(お姉ちゃんがいたら、こんなんなんかな…)

そう思ってしまった感情は、そっと隠してソファーに座り込んだ。
温かいお茶に心温まりながら、のんびり二人ソファーで休む。
今日は午前で終わりだったため、二人とも昼食を食べていないことをここで思い出す。
冷蔵庫をそっと覗いて、「オムライスでいい?」と聞かれ、先輩の手作りのオムライスを二人で食べた。

「考えたらさ、父の帰りまでだいぶ時間あるわよね…」

時計の針を見たら、まだ14時。
リビングで会話をしたり、お互いに携帯をチェックしては返信をしたり…

「ね、制服着替えてきてもいい?」
「あ、はい。どうぞ」
「…なんか西野さんだけ制服なのも疲れるでしょう?なんか部屋着かすね」
「えっ!いや、ななはこのままでだい「いいから、部屋きて」…は、はい」

先輩の部屋着…いやいやいやいや、なんかこの間から変や。

先輩の部屋へと移動し、扉をあけると、白で綺麗に整われているお部屋で、先輩の香りがした。
クローゼットの中から、少し長めのTシャツと短パンを貸してくれて、着替えていいよだなんていうものだから、恥ずかしくて首を横にふると笑っていた先輩。
どうやら先輩は気にしないようで、その場で脱ぎ出そうとするから、急いで部屋を後にした。

「ごめんごめん、どうぞ」

着替えを終えた先輩が、部屋を貸してくれた。
着替えながら、色々なところに視線がいってしまう。
机も本当に綺麗で、勉強も常にしているのかなという参考書の数。
そうか、今年で先輩は受験生だ…

「あ…っ」

そして机の端のほうにあったあるもので息が止まる。
そこには家族三人で仲良く映る先輩と白石さんと、そしてたぶん母親と思われるその写真が目にうつった。

「先輩…幼い…。そして幸せそう…」

3人の写真をこんなにも大事に飾っている彼女は、きっと…

「そうだよね…。先輩にとっての家族は…」


食事会の時に、めんどくさいと言っていた彼女の表情は、あまりにも前向きじゃなくて。自分よりも受け入れられない気持ちが強そうな印象を感じていた。

最初は綺麗な人。これが私の学校での印象。
人前では笑っているけれど、クールな表情もみせる先輩がかっこよくもあり、怖いなと感じていた部分でもあったのだけれど。
この間の食事会と、今日の帰り道、そして家の中。

自然と人に優しくできるこの人は、すごい…


優しい先輩だからこそ、大好きだった母親が忘れられないのだろう。

私にとっても、父親はあの優しかった父だけだったのに。
だけど、別にこの空間も嫌じゃない。
少しだけ落ち着く先輩の部屋と、この部屋着と…


「西野さん?」
「あ、すいません。今いきます」


のんびりしすぎてしまっていたのだろう。
部屋の扉をコンコンとノックして、先輩が声をかけてきた。
温かい部屋着に袖を通し、扉をあけると、「うん、大丈夫そう」と服をきた私をみて縦に首を振っていた。
そのまま先輩の部屋のテーブルを借りて、今週の課題にお互い取り組む。
わからないところを聞くと苦笑いされてしまったが、1年の復習だなんてほとんど頭に残ってなどいなかった。
勉強するうちに眠気が襲い、気づけば眠っていたようだ。

テーブルでねたはずなのに・・・


コンコンっ

「麻衣、帰ったぞ」
「・・・・・・んっ」
「麻衣?」
「んー…おかえり」
「ふふ、随分仲良くなったみたいだな」
「……なに?」
「いや、なんでも。そろそろ夜ご飯にするからリビングに二人できなさい」

扉を開けると真っ暗な部屋に二人仲良く眠る姿に、白石さんと母は微笑みながら去っていったようだ。

「んぅー…西野さん、西野さん」
「ん…っ、うぅ…」

耳に聞こえてくる柔らかい声に、まだ目を覚ましたくなくて、必死に抵抗してみせるが体を揺すられ起こされた。
見えてきたのは綺麗な顔…

「え…白石…せんぱ…」
「おはよ…寝ちゃってたね」

長い髪の毛をかき上げながら、天井を見上げる彼女。
あれ…そうだ、勉強してて…

「なんで私ベットに…っ…え!?」
「あぁ、先にテーブルで眠り始めたから、体痛いかなって思ってベッドに誘導したんだけど、覚えてないの?ちゃんと立って歩いてたわよ?」
「そ、そうなんですか!?」

無意識な自分の行動に、ため息が出そうになったが先輩はあまり気にした様子はなかった。
だから、なんで先輩も一緒に寝とったんですか!?なんて恥ずかしい質問はできなくて…
人と同じベッドで眠るだなんて、いつぶりなのだろう。
忙しい母親とですら、小さい頃に終わってしまい、最近では一人の家に眠る生活が多かったのに…
冷静にこのお互いの距離を考えて、恥ずかしさが止まらない。

「起きれそう?」
「は、はいっ、大丈夫です!」
「そう、じゃあ、リビングいくわよ」

手を引かれてリビングへと向かうと、いつもの大好きな香りがした。
この夜に、もう一つ驚くことが待っているなんて思いもせずに。


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