すべてを、君と。
□愛しき朝
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首元に肌寒さを感じ、ふと意識が浮上する。
本能的に隣の温もりを求めて頬を擦り寄せると、柔らかい匂いと心地よい温度が受け入れてくれた。
…小十郎様のいい匂い。大好きな温かさ。
今日はお互いにお暇を貰っているし、起きる時間にはまだ早い。昨晩も充分に眠れたわけではないから…できればこのまま二度寝したい。
欲に促されるまま小十郎様の背中に腕を回すと、触れ合っている部分との温度差にあっと手を離してしまった。
上に羽織るのが限界で、そのまま眠ってしまったけれど、おそらく小十郎様も同じなのだろう。ずり落ちて見えている肩に触れると、ひんやりと冷たくなっている。
三月半ば、朝方にかけてまだまだ冷え込む時期だ。こんな格好で眠れば、寝冷えして風邪を引いてしまうことだって大いにあり得る。
くっついてみたところ、取り敢えず熱はないようだけれど…。
起こさないように注意を払いながら、できる限り急いで袷を正していく途中、腰回りで躊躇ってしまう。
「…」
いや今更何を迷っているのか。それに、主に風邪を引かせる方がよっぽど困る。
一人気合いを入れてなんとか片をつけ、安堵の溜息をついた時、耐えきれないといったように小十郎様が小さく笑った。