すべてを、君と。

□愛しき朝
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「…!起きていらっしゃったんですか」
「うん、少し前に」
「もう、言ってくださればいいのに…」
「朝から可愛いことをしてたから、邪魔するのもと思って」

ずるい。慌て損だと拗ねたいのに、そんな風に楽しそうに笑われたら何も返せない。
にこにことご機嫌なのが悔しいし、全て見られていたことが恥ずかしくて、ふくれっ面のまま布団の中に逃げた。
すぐさま布団の上からつついてくるけれど、身体を捩って抵抗してみる。

「でも残念だな」
「…?」
「口づけでもしてくれるかと思ったのに」

いわゆるおはようのそれは、確か小十郎様が始めたものだった気がする。そう、今朝みたいに珍しく早起きしていらっしゃった朝のこと。
ただ今日に至るまで、私からしたのは一度だけだ。何度呼びかけても褥から出てこない小十郎様を起こす策として、試しにしてみた一回。その結果、小十郎様が飛び起きたのはいいが、…あれこれあって二人とも大遅刻を働くことになってしまったのだった。

以降、私からのそれは禁じ手となり、それとなくお願いされても気付かない振りをしてきた。なのに。

「えっと…」
「ごめん、冗談」

困らせるつもりはなかったんだけど。と、小十郎様はいかにも残念そうな口振りで訴えてくる。
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