スチームパンクファンタジー(仮)

□第二章
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やがて辿り着いたのはごてごてとした機械や煉瓦の街並みではなく、拓けた場所にはでたもののやはり自然で。木々が減ったことにより青空がよく見えるようになった。日差しは、木々がなければ少し眩しく感じるものの、それでも程良く暖かい。駆け抜ける風も爽やかだ。また、中央には大きな湖があった。水は清く、透明であり、中では色鮮やかな魚が泳いでいるのがわかる。街に出なかったことに少しばかり落胆したのは事実である。……が、それでもこの光景はひどく幻想的で、美しかった。まるで金の斧と銀の斧を両手に湖から女神が出てくるみたいな ───── 。

─────── と、その時だった。

ふと、湖の向こう岸に人が見えた。緩やかに波打つ絹のような輝く金髪を靡かせ、瞳の色は真上の雲一つない青空のような澄んだもの。淡く桃色に色付く頬と唇は女性らしさと、何処か幼さを含んでいた。そんな彼女を彩るのはチョコレートブラウンの気品溢れるカラードレスと同じ色をしたヒール、歯車の形をしたイヤリングに花や蔦の絡まった王冠、そして、じゃらじゃらと鎖の揺れる、王冠同様花と蔦に彩られた、歯車の形をした首輪だった。両手には金や銀の斧などではなく、桃色と黄色の薔薇で、御伽噺よりも余程女神らしい。その ”作られ物 ”の女神は、ニナに気が付くと穏やかに微笑んで、「あら、この森にお客さん?」と囀る小鳥のような美しい声で問い掛けた。

「ああ、いや、その、」
「……それとも、迷ったのかしら。ちょっと待ってて。今そっちへ向かうから」

それだけ言って彼女は湖の岸を歩き、こちらへ歩き出した。それから目を離さず、ニナはその場で固まるように待っていた。これはニナと機械人形との邂逅でもあった。
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