短編

□3秒間
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聡から電話が来たのは、それから数日後の休日だった。



『どうした?』


聡「なぁ!今日暇だろ?付き合えよ!」


『は?なんで俺が暇なことになってんだよ』


聡「どうせ!暇だろ!」


『まあ暇だけど…』


聡「やっぱり!あのさ!」



聡が提案してきたのは、今日のデートに俺もついてきて欲しいとのこと。



『なんで俺が行かなきゃなんねーんだよ。2人で行けばいいじゃん』


聡「だってさぁ!デートしてもいつも会話が弾まなくて…」



そういうことか…確かに女の子慣れしていない聡にとって、彼女とはいえふたりっきりで出かけるのはハードルが高い。


でも正直言うと、麻衣さんにはもう会いたいとは決して思えなかった。会ってしまったら友人として見守るということをやめてしまうかもしれない。そう思えてならなかったからだ。


『デートくらい頑張れよ…これからもずっと俺がついてくことになるぞ。笑』


聡「頼むよぉ!」


『はぁ……わかった。今日だけだぞ』


聡「まじで!?神!さんきゅ!じゃあ、」



聡は集合場所だけ告げて慌てて電話を切った。勝手なやつだなぁ…


俺は準備をして駅前に向かった。準備に2時間もかけてしまったことは言わないでおこう…


指定した時間通りより10分ほど早く着くと、麻衣さんの姿しかなかった。聡はまだ来ていないようだ。



『おはよう』


白石「あ、如月さん。おはよう」


『なんか変なことになっちゃってごめんね。笑』


白石「ううん、私は如月さんと話すの好きだし、全然気にしてないよ!」



そう言ってにっこりと笑う彼女。いけない感情がふつふつと湧き上がるのを感じた。


…だめだ。
聡のやつ…まだかよ!


その時俺の携帯が鳴る。出ると聡の声だった。



聡「悪い!二度寝しちゃってさ…遅れそうなんだ!」


『はぁ?何やってんだよ…』


聡「麻衣にも伝えといて!それじゃあ!」



こういう時に限って…



『聡、遅れるって。』


白石「あ、そうなの?」


『…どっか店に入って待ってようか』


白石「うん、そうだね笑」



俺達は近くのカフェに足を運んだ。



『あ、朝ごはん食べた?』


白石「ううん、お腹ぺこぺこ笑」


『じゃあ食べちゃおうか笑 はい』



そう言ってメニューを広げ、麻衣さんの方に向けてテーブルに置く。



白石「んーと…じゃあこのパンケーキにしようかな」


『飲み物は?』


白石「ミルクコーヒーで!」


『おっけー』



近くにあるボタンを押してすぐに店員が来た。店員に注文をして、顔を麻衣さんに戻す。



『なんか…まじでごめん。』


白石「ううん、いいの。聡、いつも10分は遅れるし。笑」


『……何で麻衣さんみたいな人が、』



そこまで言って俺は口を閉じた。何故聡を好きになったのか。そこにしっかりとした理由がなかったら…俺は気持ちを止められなくなる。そう思った。



白石「ん?私みたいな人が?」


『…んーん、何でもない。笑』


白石「そう?ならいいけど笑」



そこから他愛もない話を広げていく。こんなに話しやすい子と全然話せないって…聡はなんて不器用なんだ…



『それで最近小説を読むようになってさ』


白石「嘘!私も読むんだ。小説」


『まじ?じゃあ知ってるかな。これ』


白石「あ!それ、私読みたかったやつだ!」


『…貸そうか?読み終わったし』


白石「いいの!?ありがとう!じゃあ…はい。これ貸すよ!」


『えっと…あ、これ、興味あったけど買うか迷ってたやつ』


白石「これ、凄く面白いから。主人公の心情の書き方が素敵なの!」


『…じゃあ貸してもらおうかな。ありがとう』


白石「こちらこそ!笑」



聡を裏切れない。その気持ちの隅に少し、隙間ができた気がした。
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