短編
□君の名前
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平手side
私には好きな人がいる。お婆さんに席を譲るのに必死で。そんな姿に一目惚れをしてしまったんだ。でも彼の名前を知らない。君の名前は?
いつも通りの通学路を歩いていると、肩にかけてたスクールバッグを後ろから不意に引っ張られ、すんなりと離してしまった
平手「ちょっと!!」
『あの黒い服の男ですよね?』
平手「あ、はい。そうです!」
『待っててください』
そう言うとその男性はひったくり犯の逃げた方へと走っていった。あの人ってもしかして…
じっとしていられなくて、ふたりを必死に追いかける。ようやく追いついたと思ったらひったくり犯はナイフを取り出していて…
平手「警察の方!こっちです!」
私が大きな声で叫ぶと、ひったくり犯は私の鞄を男性に投げて逃げていった。無事でよかった…
男性と目が合い、もしかしてが確信へと変わる。やっぱりあの人だ…
『ありがとうございます。でも逃がしちゃいました…』
平手「いえ、いいんです。鞄ありがとうございます!」
『いえ、で、警察の方は?』
平手「…あれ嘘です笑」
『え!嘘だったんですか!?』
平手「はい笑」
『まんまと騙されました笑』
平手「でもあなたが無事でよかったです」
『あなたのお陰です。じゃあ俺行きますね。遅刻しそうで…』
そう言って去ろうとする男性。ねぇ…
平手「ちょっと待って!」
『どうしました?』
平手「あーえっと、学校は何処なのかなって…」
『俺ですか?俺は乃木高です』
平手「あ、そ、そうなんだ」
私の意気地無し!なんで名前聞かないのよ!!
『あなたは?』
平手「欅高です」
『そうなんだ…』
少しの間の沈黙が、ふたりの空間を埋めていく
『「あの!」』
ふたりの距離が近づくまで、あと少し。
もう少し。
END.