短編

□だけど好き
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今日も朝早くから会社に向かう。毎朝社長が飲むコーヒーと、レタス抜きのベーグルを買って。そう、俺はある会社の社長秘書をやっている




『おはようございます』




コーヒーとベーグルを手渡しながら挨拶を交わす




社長「おはよう。今日のスケジュールは?」


『今日は朝から子会社との会議が、』


社長「キャンセルだ」


『え、社長、しかし…』


社長「腹減ったな。ベーグルじゃ足りん。他にもなにか買ってきてくれ」


『…はい、只今!』




そう、俺のとこの社長は気まぐれで、秘書である俺に何でもやらせる。その日の帰りも社長の帰宅時間に合わせなければならないため、今までの彼女ともなかなか時間が作れなかった





『すいません、このサンドイッチとこれひとつずつ』


店員「かしこまりました」


「はぁ?なんでカード使えないの!」


店員「そう言われましても…当店ではクレジット払いは扱っていませんので…」




店員にそう告げ、待っていると隣のレジで何やら揉めている様子




『どうしたんですか?』


「こいつ、ここではカード使えないとか言ってんの!現金は持ち合わせてないし…あぁ、このままじゃクビになっちゃう…」




あ、この子も俺と同業の人なのかな。仕方ない…




『…いくら?』


店員「2980円です」




財布を取り出し、店員に現金を手渡す




『はい。お釣りはいらないから』




元のレジに戻り、サンドイッチを受け取って足早に店を出る。すると後ろからヒールの音が聞こえてきて…




「…ありがと。名前なんていうの?」


『如月零』


「私は齋藤飛鳥。お金返すから連絡先教えて。零」


『早速呼び捨てかよ笑 別にいいよ。じゃあ俺はここだから』


飛鳥「え!零このビルで働いてんの?」


『そうだけど』


飛鳥「私向かいのビル」


『あ、そうなの?』


飛鳥「はい、これ私のラインだから。仕事終わったら電話して」




メモ帳を取り出し、彼女の連絡先を書いたであろう紙を手渡される




『…わかった』


飛鳥「じゃあまたね。早くしないとどやされちゃう」




そう言って走って向かいのビルに入っていく彼女





ガサツだけど律儀な女。この時はそれしか思わなかった
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