短編
□だけど好き
2ページ/8ページ
今日も朝早くから会社に向かう。毎朝社長が飲むコーヒーと、レタス抜きのベーグルを買って。そう、俺はある会社の社長秘書をやっている
『おはようございます』
コーヒーとベーグルを手渡しながら挨拶を交わす
社長「おはよう。今日のスケジュールは?」
『今日は朝から子会社との会議が、』
社長「キャンセルだ」
『え、社長、しかし…』
社長「腹減ったな。ベーグルじゃ足りん。他にもなにか買ってきてくれ」
『…はい、只今!』
そう、俺のとこの社長は気まぐれで、秘書である俺に何でもやらせる。その日の帰りも社長の帰宅時間に合わせなければならないため、今までの彼女ともなかなか時間が作れなかった
『すいません、このサンドイッチとこれひとつずつ』
店員「かしこまりました」
「はぁ?なんでカード使えないの!」
店員「そう言われましても…当店ではクレジット払いは扱っていませんので…」
店員にそう告げ、待っていると隣のレジで何やら揉めている様子
『どうしたんですか?』
「こいつ、ここではカード使えないとか言ってんの!現金は持ち合わせてないし…あぁ、このままじゃクビになっちゃう…」
あ、この子も俺と同業の人なのかな。仕方ない…
『…いくら?』
店員「2980円です」
財布を取り出し、店員に現金を手渡す
『はい。お釣りはいらないから』
元のレジに戻り、サンドイッチを受け取って足早に店を出る。すると後ろからヒールの音が聞こえてきて…
「…ありがと。名前なんていうの?」
『如月零』
「私は齋藤飛鳥。お金返すから連絡先教えて。零」
『早速呼び捨てかよ笑 別にいいよ。じゃあ俺はここだから』
飛鳥「え!零このビルで働いてんの?」
『そうだけど』
飛鳥「私向かいのビル」
『あ、そうなの?』
飛鳥「はい、これ私のラインだから。仕事終わったら電話して」
メモ帳を取り出し、彼女の連絡先を書いたであろう紙を手渡される
『…わかった』
飛鳥「じゃあまたね。早くしないとどやされちゃう」
そう言って走って向かいのビルに入っていく彼女
ガサツだけど律儀な女。この時はそれしか思わなかった