短編
□愛はたったひとつだけだ
5ページ/6ページ
建物の中に入ると既に沢山の人で溢れかえっていた。緊張が全身の血流と共に流れる
茜「なんでそんなに緊張してるの笑 私たちの式じゃないからね?笑」
『わかってるよ笑』
俺たちが席につくと式はすぐに始まり、花嫁、花婿が登場する。理佐のウエディングドレス姿。まただ。鼓動が早くなり、大きく脈打つ。
『………っ』
茜「零…?」
『…ごめん、大丈夫』
茜「………」
式は順調に進み、理佐が一時退場。
茜「零」
『…………』
茜「ねぇ、零!」
『…っ、ごめん、なに?』
茜「はぁ、もうしょうがないなぁ…ほら、理佐さんに会いに行ったら?」
『え、なんで』
茜「さっきからずっと上の空じゃん。理佐さんと会って話してきて?」
『でも、』
茜「理佐さんのこと…まだ好きなんでしょ?」
『茜…ごめん』
茜「…ほら、さっさと行く!」
『…ありがとう』
茜に背中を押され、走り出す
茜「………零…大好きだったよ…っ」
急いで理佐の元に向かう。ノックをし扉を開けると、そこにはウエディングドレス姿の理佐が座っていて…
理佐「零…」
『理佐…綺麗だよ』
俺はこういうことを言うのは苦手なはずなのに、言葉が自然に出ていた
理佐「ありがとう。零もスーツ姿、かっこいいね」
『ありがとう』
しばらくの沈黙がこの部屋を埋めていく。耐えられなくなって俺は聞きたかったことを口にしていた
『理佐は今、幸せ?』
理佐「…うん。幸せだよ…っ?」
『ならなんで泣いてんだよ…』
理佐「…………っ」
『俺は理佐に笑顔でいて欲しくて理佐の前から消えたのに…なんでそんな顔するんだよ…』
理佐「だって……今でも零のことが好きなの…笑顔になんてなれないよ…」
その言葉を聞いて、咄嗟に理佐を抱きしめる
『ほんと今さらだよ…』
理佐「ごめん…っ」
理佐から離れ、手を差し出す
『俺は全てを捨て去る覚悟はできてる。理佐は…?』
理佐「…できてるよ。今度こそ」
そう言って俺の手をとる理佐
『離すなよ?』
理佐「もう絶対に離さない…っ」