短編

□愛はたったひとつだけだ
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建物の中に入ると既に沢山の人で溢れかえっていた。緊張が全身の血流と共に流れる




茜「なんでそんなに緊張してるの笑 私たちの式じゃないからね?笑」


『わかってるよ笑』




俺たちが席につくと式はすぐに始まり、花嫁、花婿が登場する。理佐のウエディングドレス姿。まただ。鼓動が早くなり、大きく脈打つ。




『………っ』


茜「零…?」


『…ごめん、大丈夫』


茜「………」



式は順調に進み、理佐が一時退場。



茜「零」


『…………』


茜「ねぇ、零!」


『…っ、ごめん、なに?』


茜「はぁ、もうしょうがないなぁ…ほら、理佐さんに会いに行ったら?」


『え、なんで』


茜「さっきからずっと上の空じゃん。理佐さんと会って話してきて?」


『でも、』


茜「理佐さんのこと…まだ好きなんでしょ?」


『茜…ごめん』


茜「…ほら、さっさと行く!」


『…ありがとう』



茜に背中を押され、走り出す



茜「………零…大好きだったよ…っ」







急いで理佐の元に向かう。ノックをし扉を開けると、そこにはウエディングドレス姿の理佐が座っていて…




理佐「零…」


『理佐…綺麗だよ』



俺はこういうことを言うのは苦手なはずなのに、言葉が自然に出ていた




理佐「ありがとう。零もスーツ姿、かっこいいね」


『ありがとう』




しばらくの沈黙がこの部屋を埋めていく。耐えられなくなって俺は聞きたかったことを口にしていた




『理佐は今、幸せ?』


理佐「…うん。幸せだよ…っ?」


『ならなんで泣いてんだよ…』


理佐「…………っ」


『俺は理佐に笑顔でいて欲しくて理佐の前から消えたのに…なんでそんな顔するんだよ…』


理佐「だって……今でも零のことが好きなの…笑顔になんてなれないよ…」




その言葉を聞いて、咄嗟に理佐を抱きしめる




『ほんと今さらだよ…』


理佐「ごめん…っ」




理佐から離れ、手を差し出す




『俺は全てを捨て去る覚悟はできてる。理佐は…?』


理佐「…できてるよ。今度こそ」




そう言って俺の手をとる理佐




『離すなよ?』


理佐「もう絶対に離さない…っ」
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