短編
□守りたい
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渡邉理佐。彼女は常に浮いていた。小学校から今通っている高校までずっと同じ学校だけど、クラスでも誰とも喋らず、ただ窓を眺めるところをよく見ていた。
少しクールな顔ということもあり、不良と言われることも少なくなかった。
でも俺は、そんな彼女のことが…
女1「また黄昏てるよ。笑」
女2「ほんとだ。不気味過ぎない?笑」
女1「この前聞いたんだけど!ヤクザと関係持ってるらしいよー?」
女2「やっば笑」
『…やめろって』
女1「えぇ?だってやばくない?笑」
男1「零!そんなジロジロみんなって!殺されんぞ?笑」
『…まじでそういうのよくねーよ』
男2「はぁ?どうしたんだよ」
『別に…』
俺はもやもやして仕方がなかった。
そんな毎日を過ごしていると、学校内で事件が起きた。
先生「みんな席に着け」
先生の声で一斉に静かになる。
先生「昨日の夜、居残りをしていた女子生徒が何者かに襲われた。顔を酷く殴られていたそうだ。」
再び騒々しくなる教室。それでも大体のクラスメイトの視線は渡邉さんの方を向いていた。
先生「お前ら、なんか知ってんのか?」
女1「それってA組の子ですよね??昨日渡邉さんが遅くまで残ってA組に入っていくのを見ましたー」
女2「私もー」
男1「俺も見たよ先生」
先生「…渡邉。本当か?」
理佐「…いえ、昨日はすぐに帰りました」
先生「家の人に聞けばそう答えるんだな?」
理佐「……昨日親は家にいませんでした」
先生「そうか…渡邉、ホームルームが終わったら職員室に来なさい」
理佐「はい…」
渡邉さんはまるで諦めているように頷き、窓の外を見ていた。渡邉さんは本当にやったのか…?そうは思えない。
ホームルームが終わり、俺は気になって渡邉さんの後を追いかけるように歩き始める。彼女が向かったのは職員室じゃなく、屋上だった。
どうやったのか知らないけど、立ち入り禁止になっている屋上の鍵を開け、ドアの奥に消えていく。
俺は少し待ってから、ドアを少し浮かせるように開け、外を覗き見た。
泣いていた。
屈んで、声を押し殺して、
凄く苦しそうに泣いていた。