短編

□君の名前
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如月side


俺には好きな人がいる。でも学校も違うし、話したこともない。名前もしらない。じゃあなんで好きかって?それは…



車掌「ドア閉まりまーす。閉まるドアにご注意ください」


『ちょ、待ったぁ!』



電車のドアが閉まる前に何とか乗り込み、息を整えて空いていた席に座る。また遅刻するかと思ったぁ…

そんなことを考えながら周りを見渡すと、一人のおばあちゃんが電車の揺れに必死に耐えながら立っていた



『お婆ちゃん。よかったらここ使って?』


お婆さん「ええのか?ありがとうねぇ」



そう言ってゆっくりと俺の座っていた席に移動するんだけど、何故か俺の座ってた席はもう空いてなくて。さっき俺の近くに立ってた男の人が勝手に座っていた



『ちょっとあんた。俺はこのお婆ちゃんに席譲ったんだけど』


男「は?んなのしらねーよ。ちゃんとキープしとかねぇ方が悪ぃんじゃねーの?」


『はぁ?てめぇ、』


「あの、お婆さん。良ければこの席使ってください」


お婆さん「えぇ?ええんかい?ありがとうねぇ。今日は優しい人が沢山じゃねぇ」


『あ…ま、いっか』



その時に席を譲った女性はお婆ちゃんと楽しそうに会話していて。その姿に一目惚れをしてしまった

その日から通学する時に乗る電車で必ずその人を探してしまう。名前が知りたい。君の名前は?




あの日から数日が経ち、名前がしれなくて悶々としている日々。そんな時だった


いつものように電車を降りて学校までの道を歩いていると、目の前で女性が鞄を取られた。


「ちょっと!!」


『あの黒い服の男ですよね?』


「あ、はい。そうです!」


『待っててください』



俺は必死に走った。自分で言うのもなんだけど、学校でも走るのに関しては誰にも負けない自信がある。

何とかその男に追いつき、後ろから思い切り蹴りを入れる



『はぁ…はぁ…おい。鞄返せ』


男「んだてめぇはよぉ!邪魔すんじゃねぇ!!」



その男はポケットに手を突っ込んだかと思うと、おもむろにナイフを取り出した。これはやばい…



男「どうした?ビビってんのか?笑」


『ほんっと、とことんダサいわ。あんた』



ここは引けねぇ。刺されるのを覚悟で拳を構えると…



「警察の方!こっちです!」


男「くそがっ!鞄なんかくれてやるよ!!」



そう言って男は走り去っていった。ふぅ…

声のした方を見ると先程の女性が警察を呼んでくれたみたい。



『ありがとうございます。でも逃がしちゃいました…』


「いえ、いいんです。鞄ありがとうございます!」


『いえ、で、警察の方は?』


「…あれ嘘です笑」


『え!嘘だったんですか!?』


「はい笑」



この笑顔、薄々は気づいていたけどやっぱり…
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