短編
□愛はたったひとつだけだ
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俺たちはそのまま式場を抜け出し、道路沿いまで走る。すると…
「おい、理佐!」
今日理佐と結婚するはずだった男がこっちに向かってくる。
「早くしろ!式の続きが始まるぞ!」
理佐「…私、あなたと結婚しない」
「はぁ?何言ってんだ!早く行くぞ!」
その男は無理やり連れ戻そうと理佐の腕を強く引く。理佐も抵抗して後ろに重心をかけると男の手が突然離れた
理佐「きゃっ!」
『理佐っ!!』
理佐が道路に飛び出した。でも車は容赦なく走ってきて、俺は咄嗟に理佐の腕を引く。その勢いで俺が道路の中に倒れ込み…
キィィィィ!ガンッ!!
一瞬の強い痛みが全身を襲い、そのまま勢いよく転がっていった。
朦朧とした意識の中、ひとつの大きな声が聞こえる。理佐だ…
理佐「零!ねぇ零!!早く救急車呼んで!!!」
『理佐…』
理佐「なんで……っ」
『言ったじゃん…俺は全てを…捨てる覚悟はできてるって…』
理佐「やだ!ねえ零!!止まんない…血がとまんないよ……っ」
『あの時理佐を手放してなければ…俺たち幸せになれたのかな……』
理佐「喋っちゃだめ…!」
『理佐…ごめんな……っ』
理佐「やだ!やだよ!零!!…零………っ」
俺は目を閉じ、意識を手放した
愛はたったひとつだけだ
ここで失えば絶対見つからない
END.