短編
□愛はたったひとつだけだ
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それは理佐の両親に挨拶へ行った次の日の出来事だった。
『昨日のご両親の反応、どうだった?』
その話を振ると、理佐が俯いてしまう
理佐「私のお父さんが、零と付き合うことは許さないって…」
『は……?』
理佐「私にはもう…婚約者がいるらしいの…」
その言葉を聞いた瞬間、咄嗟に机の上にあったコーラのペットボトルを壁に投げた
『俺の何を知ってんだよ…婚約者ってなんなんだよ…』
壁にぶち当たり溢れだしているコーラの泡のように、俺の感情もとめどなく外へと流れ出してしまう
理佐「零!落ち着いて!」
『…理佐は「はいそうですか」って引き下がれるの?』
理佐「そうじゃないけど…」
そうじゃないけど…なに?
理佐はこんな俺より婚約者を選ぶ?それで納得してる?
その疑問が俺の頭の中に住み着いて離れなかった
それから理佐は少しの間実家に帰ると言い残し、同棲していたアパートを出ていった。この日から俺は理佐の実家に通うようになった。何度も何度も。許してもらえるまで。そして今日も。
『理佐とのこと、許してください!』
父「無理だと何度も言っているだろう!しつこいぞ!」
『じゃあ理佐に会わせて下さい。少しだけでいいので!』
父「断る。帰れ!」
勢いよく閉められるドア。雨に打たれながら唖然とする。くっそ、こうなったら意地でも理佐に会ってやる。会って話しをしなきゃいけないんだ
2階の窓を見上げると、理佐と目が合う。そうだ。
俺は登れそうな場所を見つけ、そこから屋根へと上がり、理佐と目が合った窓の外までたどり着く
prrrrrr
理佐「零?」
理佐に電話をかけるとすぐに出る
『窓の外、見て』
理佐「……っ」
『理佐、窓開けて』
理佐「………」
『お願いだから。俺たち話すべきだよ』
理佐「ごめん…時間が欲しいのっ…」
そう言って泣き出す理佐
なんでだよ…理佐が悪いわけじゃないのに…理佐を悲しませたいわけじゃないのに…
もういっそのこと理佐の前から消えてしまえば、君は笑顔を取り戻してくれるのかな