短編
□守りたい
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俺はドアをそっと閉め、教室に戻った。しばらくすると渡邉さんも戻ってきて、自分の席に座る。
それを待ってたかのようにクラスのほぼ全員が渡邉さんを取り囲み、罵声を浴びせていた。
女1「どうせあんたがやったんでしょ?」
理佐「…」
女2「何とか言いなさいよ」
男1「おい、口ねーのかてめーは」
男2「本当にやったからしゃべれねーんじゃねーの?」
女1「ほんと、それだよね」
理佐「……」
もう無理だった。こんなことを見ることも、それを黙って見過ごすことも。それに何より渡邉さんの涙を、もう見たくなかった。
『お前らいい加減にしろ』
女1「零?どうしたの」
『なんで決めつけんだよ。まだやったか分かってねーのに』
女2「ほぼ確定でしょ」
『根拠は』
男1「おいおい零、どうしたよ!お前もこっち側だろ!?」
『ふざけんな!!』
俺は普段から静かだからか、周りを見ると驚いたような、恐れているような表情をしていた。
『…ひとりに集団で言いがかりつけて楽しいか。何も言い返せないやつをいじめるのがそんなに楽しいのかよ。あ?おい、答えろよ』
男1「は、はぁ?意味わかんねーこと言ってんじゃ、」
『意味わかんねーこと言ってんのはどっちだ!?』
男1「……」
『……わかったらもうやめろ。』
女1「ちょ、ちょっと!なんで私たちが悪者みたいになってんの!?」
男2「そうだよ!おかしいだろ!?渡邉がやったに決まってんだよ!!」
限界だった。もう怒りを抑えられそうもない。
『……』
俺は無言で男の胸ぐらを掴み、並んでいる机を押し退けて黒板に強く叩きつける。
「「きゃぁぁあ!」」
『わかんねーなら仕方ねーよな』
男2「く、苦しい…っ」
『てめーらのやってきたことに比べれば苦しくともなんともねーだろ。歯ぁ食いしばれ』
男1「お、おい!零、頼むからやめてくれ!」
『俺が止めた時お前らはやめたか?やめてねーよな』
男1「それは……」
その時教室のドアが開く音がした。
先生「お、おい!何やってんだ!!」
その後複数人の職員に押さえつけられ、職員室に連れていかれた。
数時間説教を受け、反省文の紙を持って職員室を後にする。鞄を取りに教室まで戻ると、渡邉さんが残っていた。
理佐「なんで…庇うの?」
『…だっておかしいだろ』
理佐「如月くんと何も関係ないじゃん…」
『関係なくねーよ。これ以上見てるのは俺が耐えらんねー』
理佐「……」
『絶対に折れんなよ。やってないならやってないって言いきれ。何か言われたら…俺が守るから』
理佐「……」
『それじゃあ…また明日な』
これからは堂々と渡邉さんを守ろう。そう決意した。