短編

□3秒間
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その後も小説のことや、他の趣味のことでも話は大きく広がり、収拾がついた頃にはもう外は暗くなっていた。



『…もうこんな時間か』


白石「帰らなきゃね。笑」


『だな笑』



俺は伝票を手に取り、忘れ物がないか見てからレジに足を運ぶ。



白石「いいよ!私も払う!」


『いいって。今日は俺から誘ったんだし』


白石「…わかった。じゃあ今度は私から誘っちゃおうかな?…なんてね笑」


『……』



精算を済ませて外に出ると、冬を感じさせるような香りが鼻をつく。




白石「さっむいね!笑 それじゃあ…また、かな?」


『…送ってくよ』


白石「いいよ!駅まで一緒でしょ?そこまででいいから!」


『わかった』



俺達は駅に向かって歩き始めた。



白石「零くんとここまで趣味が合うとは思わなかったよ!久々に自分の話でこんな盛り上がったかも。笑」


『俺もびっくりした。笑』



そんな他愛もない話を続けながら、何とかふたりの時間を伸ばそうと、ゆっくりと歩く。


でも永遠なんてなくて、目の前にはもう電車が滑り込んできていた。



白石「それじゃあね。今日はありがとう。楽しかった!」


『こちらこそ。また誘うよ』


白石「…それはやめた方がいいかも。」


『え、なんで、』


白石「わかってるでしょ?…これ以上は…だめだよ…」


『………』



俺は何も言えなかった。俺の気持ちに麻衣さんは気付いている。それに麻衣さんも少なからず俺の事を…



『俺はっ、』


白石「…じゃあね!」



麻衣さんは電車に乗り込み、ドアが早く閉まってくれないかと言いたげな笑みを浮かべて手を振っていた。



「ドアが閉まります。」



アナウンスと共に動き出すドアの隙間をすり抜け、麻衣さんの目の前に立つ。



白石「…っ」



麻衣さんは驚いた顔をしてたけど、その後すぐに悲しそうな、儚げな表情で窓の外を眺めていた。


麻衣さんの降りる駅につき、俺も外に足を放り出す。



白石「どうしてよ…」


『もう…無理だ。聡の前で最良の親友を演じるのも、自分の気持ちに嘘をつくのも…もうたくさんだ。』


白石「無理だよ…私、聡と付き合ってるんだよ…?」


『…3秒』


白石「え…?」


『君の時間を3秒だけ、俺にくれないか』


白石「……」


『そしたら…きっぱり諦めるよ』


白石「…わかった」


『3秒間…俺だけを見て』


白石「うん…」


『聡のことを忘れて…』


白石「うん…っ」



麻衣さんの頬を伝う涙を親指で拭い、瞳をのぞき込む。


いずれ麻衣さんも俺の目を見る。その3秒は今まで感じたことの無い長さで、時間が止まったように感じた。



そのままどちらからともなく引き寄せ合い、駅の溢れそうな人混みの中、何かを隠すように







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