短編3
□TRIGGER FAIRY 4
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「…今日も閉まってるね」
「そうだな、店主の身内が亡くなったらしいからな…しばらく休むだろう」
あれから数日が経ち二人は毎日のように花屋へと足を運ぶも連日臨時休業の知らせが貼り出されているだけだった
「お花…選んでほしいのに」
「………死んだのはあの店員の父親だそうだ」
「……え?」
店主から聞いていたことをダヒョンに告げる男の表情は相変わらずの寡黙なしかめっ面だった
「そんな…どうして、病気?」
「…そこまでは知らない」
呟くようにそう言うと車へと向かう男、そのあとに続いてダヒョンも車へと歩き出す
「…もうすぐこの街を出る」
「え…そう…なんだ」
「…いやか?」
後部座席に座るダヒョンの表情をミラー越しにうかがう、窓から流れる景色を眺める瞳は揺れていた
「ダディが行くところは私の行くところだよ…」
「そうか…まだやることが少しある、それまでに花屋が再開すればいいな」
「……うん!」
男から放たれた言葉に目を丸く開くダヒョンは嬉しそうに返事をした
数日後…
「あ、ダディ!開いてる!」
「そうだな…寄っていこう」
あれからも毎日訪れていた二人はついに再開した花屋へと足を運ぶ
「あぁ…常連さん、いらっしゃい」
「あぁ…もう大丈夫なのか?」
「ははは…」
男の質問に乾いた笑いで返す店主に元気はない、しかしそれは連日のゴタゴタに追われた疲れから来ているようだった
「あの、サナ…さんは?」
「あぁ、ダヒョンちゃん…いらっしゃい…サナなら奥だよ、ちょっと待ってて」
サナを呼ぶため奥に引っ込む店主にダヒョンはそわそわしている
「あ、ダヒョンちゃんいらっしゃい!」
奥から現れたサナはいつもの笑顔を浮かべていた、しかし無理をしているのは一目瞭然だった
「こんにちは、サナさん…またお花を選んでもらえますか?」
「うん…まかせて!」
父が亡くなりまだ少ししか経っていないというのに健気に働くサナに店主は苦い表情をする、ダヒョンも空元気なサナを心配そうな目で見つめる
「あ!色はどうする?」
「白と…紫で…」
「店主、頼みがあるんだが…」
ダヒョンの横で店主にそう言い男は金銭を渡した
「彼女に花束を一つ見繕ってくれ」
「はぁ…サナにですか?」
不思議そうな顔の店主をよそに男はサナの方を向いた
「君のお父上の墓前に供えてくれると助かる…私とダヒョンの分だ」
「え……あ、ありがとうございます…!」
「ダヒョン、私は車で待っているからゆっくり話しでもしなさい」
男は用は済んだと言わんばかりに店を出ていった
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