二次創作【腐】

□素直の精一杯
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すなおの精一杯。




「・・・ただいま。」
誰もいない暗い部屋に自分の声が響く。岡山はまだいない。後ろ手でドアを閉めてはぁと深くため息をついた。
俺と岡山は犬猿の仲だとか言われていたが俺の方はずっと岡山のことが好きで、ムカつくほどに好きで。散々色々な人に迷惑かけて、色々あって・・・その想いが通じたのが2ヶ月前だとかそのくらい。そこから同棲までこぎつけた俺を誰か褒めて欲しい。
キスもした、抱きしめた、その先だって。今までの俺らだったら有り得ないほどに進展してると思う。しかし、しかしだ、岡山は俺のことが好きなのかというのは毎日思ってしまう。
告白したのは俺からで。
キスもいつも俺からで。
誘うのとか、も。
好きって言う度に、キスする度に、そういう誘いの度に、岡山は顔を赤くするし照れてるし。好きだとは思いたい。けれども、岡山からは言ってくれなくて。好きって言ってほしい、キスしてほしい、誘って求めてほしい。とか。そのくらい思ったって・・・少しくらいあいつに素直を求めたって罰は当たらんだろう。
素直じゃないところが好きだけどたまにはほんのたまには素直になってほしいとかいうのは我儘だろうか。
はぁとまた深く息をついてごろりとソファに横になる。ご飯は食べてきたし、岡山もいらないって言ってたし。あとは風呂入るだけだけど。ソファに横たわった体は言うことを聞かない。
そのまま俺は瞼を閉じて眠りの波に落ちていった。


ツイツイとほっぺに小さく何かがあたってる。まだ覚めきってない頭でぼんやりと感じるその刺激。少しだけふわりとだけ感じる桃の香り・・・。
おかやま、帰ってきてる?
この指先は・・・岡山?
ぼんやりとした頭でその事を思うとパッと意識がクリアになる。そりゃそうだ、岡山に触られてるんだ堪能しないと勿体無い。状況はよくわからないが。
そんなことを考えてる間に頬を掴まれてそのまま引っ張られるって少し痛い。力加減考えてくれ。これ誰でも起きるのでは・・・寧ろ、起こすためにやってる?
「相変わらず・・・」
小さな声でも聞き違えることのない岡山の声。やっぱ岡山か。いや、そうじゃなかったら困るのだが。
「・・・抓っても、かっこいい。」
ボソリと小さく、誰にも聞こえないかのように呟いたその声は、近くにいる俺には充分聞こえて。
ドキリと心が跳ねる。好きな相手にかっこいいと言われて嬉しくないわけない。もしかして俺が寝てる時毎回、こんなことしてるのかなんて。可愛すぎる。顔を見たい衝動に襲われるけど、まだ我慢。もっと、彼の行動が知りたくて。
「・・・起きてます?」
少し疑うように言った声色に若干の冷や汗をかいて、寝息をたてる振りをする。
狸寝入りバレたら確実に殺されそうだなあと思いつつ。そのままでいると岡山は息をついてまた俺を弄り始めた。
サラサラと髪を梳かされたり、頬を擽られたり。流石に擽るのは笑いそうになったけど、なんとか堪えて。
今、岡山はどんな顔してるのだろう。見たい、起きて見たいけど、このままでいたくて。クルクルと葛藤が頭を回る。そんな葛藤も知らず彼はじっと近づいて、きて。
「・・・広島、」
・・・好きです。
小さな小さな声で岡山、から。すきです。って。
その言葉のあと驚いたからだろうか、嬉しかったからだろうか。少し遅れて漂う桃の香りが近くなったのと、唇に触れる体温で。キスされてることに気づいた。
そっと、触れるだけの軽い軽いキス。
桃の香りがすぐ離れたけど、唇に残る体温はまだ暖かい。
きっと、彼の素直の精一杯。
なんて、可愛いんだろうか。ああもう岡山の顔が見たい。もう、我慢出来ない。
バッと起き上がって、すぐ一瞬岡山の顔が少し赤いのと目を見開いてるようにしてるのが見えた。いつもは仏頂面の彼が俺でその表情が崩れるのがたまらなく好きだ。
「えっ、あっ、え。」
まだ理解してない岡山の表情を見ながら腕を引き、勢いそのまま口付ける。まだ残る暖かい体温。フワリと香る桃。その余韻を引きながら一瞬でパッと唇を離す。
「おはよ。岡山。」
俺も好きだよ。




END
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