ジョジョ

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「……落ち着いたか」






「…まぁ、少しは____」








泣き張らした目は酷く腫れ、到底外を

歩いて帰れるような顔では無くなって

いる為、私は未だに帰れずリビングの

ソファに腰を掛け、気まずさに耐えて

いる真っ最中である。







「それにしても、脚を出すとは思わな

かった」








「それは、其のごめんなさい……」








目の前に座る相手____私よりも一つ下

であり、今は名前も呼びたくないアイ

ツの弟の一人である承太郎くんの、右

頬を真っ赤にさせた張本人は私だ。

其の原因は、私である為____もう謝る

言葉しか口からは出ない。








「____否、元はと言えばアイツが悪ィん

だ、気にすんな」







そう、私は彼の部屋で浮気現場を目撃

し、プッツンしてしまったのだ。

二人で食べようとしたケーキを顔目掛

け投げたのを皮切れに、手に取れる物

を全て投げ当てながら、言葉の限り暴

言を吐きまくり



騒ぎを聞き付けた承太郎くんを含む五

人が駆け付け、止めようとしてはくれ

たものの…激怒し、頭に血が昇ってい

た私は、腕を抑え止めてくれていた承

太郎くんを、勢い余って肘打ちすると

アイツ目掛け自由に動かせる脚を使

い、天誅、と言わんばかりに蹴り上げ

た時点で騒ぎは中断となった。





私は嗚咽を溢し、ジョナサンさんに連

れて行かれる二人を睨み付けながら、

承太郎くんに下へと連れて来られた。




二人は別室で長男であるジョナサンさ

んとお話し中らしく、他の三人は気を

遣って自室へと居てくれている。



自分よりも一つも二つも下の相手に気

を遣わせてしまった、という腑甲斐無

さと、先程の醜い醜態を晒したせいも

有り、早く此の腫れた目の熱が引いて

くれ、と祈るばかりだ。








「あの、ジョナサンさんにも謝ってお

いてくれる?私もう、此処来ないから」








人様の家を汚し、怪我をさせた側とし

ては身勝手な話だが、私は二度とアイ

ツの顔も見たくはないし近寄らないつ

もりだ、こうして顔を会わせるのも

今日を最後にしたいのだが____



目の前に座る承太郎くんは、








「嫌だね、其は自分の口できっちり謝

りな」






「っごもっとも、何ですけど……あの、

私の気持ちも察して欲しい、と言うか

ぁ……」






「今回の事に関しては同情はする、が

____アンタも中々酷かったぜ」







思わず敬語になりなりながら言葉を探

し伝えるも、又、痛い所を突かれぐう

の音も出ない。




遣り過ぎた____相手は何ら抵抗もして

来なかったのに対し、私は力の限り

____容赦なく物を投げ付け、有ろう事

か蹴りまでも喰らわせたのだ…此処は

きちんと謝るしかないのも分かってい

る、しかし、謝る為に再度此処に訪れ

た時にアイツと鉢合せ何てしたら




再びプッツンする自信しか無い。









「っ〜…ジョナサンさん、に謝ってか

ら……か、え____ぇッ?」







俯いた顔を上げると、直ぐ目の前に綺

麗に輝くエメラルドの瞳が私を見詰め

ていた。思わず間抜けな声が溢れ、一

瞬身体が固まってしまう。



次の瞬間、ゴツゴツとした大きな掌が

優しく頬を撫でる。







「っ____!」








「目、腫れ引いてきたみてェだな。此く

らいなら大丈夫だろ」






「ァッ、あ〜…うん、そう…だ、ね」








もしかして、と言う展開を頭の中で想

像していた自分が恥ずかしくなり、承

太郎くんの言葉に勢い良く頷いて答え

ると、承太郎くんは「キスでもされる

と思ったのか?」と、鼻で笑う。







「……(うわぁ、笑った顔そっくり)」







瞳に映り込んだ、小馬鹿に笑う顔もア

ノ星の様に光に反射して輝く瞳の色も

全て、“ジョセフ”と被ってしまう。


まだ、あんな奴の事を思い出すのか

____と自嘲してはじんわりと、瞳の奥

が熱くなる。





やっと目の腫れが引いたのに、と小さ

く溢しながら袖で何度も目を擦る。泣

きたく無いのに涙が出る何て、悔しく

て堪らない。






「…おい、また腫れンぞ」







「っ、放っておいて」






キツく言い返してしまい、自分の腑甲

斐無さに唇を強く噛み締めていると、

不意に頭を撫でられる感覚に、瞬きを

繰り返す。


視線だけ上へと向けると、其処には少

し困ったような顔をした承太郎くんが

居た。







 

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