ジョジョ
□3
1ページ/1ページ
玄関に向かうとチャイムは数度鳴り響
いており扉に手を伸ばすが____
「俺が出る、お前は後ろに居ろ」
「え、どうして?私の家なんだし、私
が……分かったからそんなに睨まないで
よ」
意を唱える事を許そうとはしないディ
オの瞳に負け、両手を軽く挙げ示すと
ディオは再度「動くなよ」と口にし扉を
ゆっくりと開ける。
扉を開けたものの、どうやら見詰め合
っているのだろうか…言葉を交わす事
なく暫く沈黙が空間を包み込む。
ディオに来るな、と言われていたが互
いに固まったままの状態を只見ている
のも詰まらない為、隣へと駆け寄る。
玄関先に居たのは長身の好青年で、其
の後ろにも二人、同じ背丈をした青年
が立っていた。軽く会釈をし笑って見
せると、目の前の青年は酷く驚いたよ
うな、懐かしむような表情を浮かべ私
を見詰めていた。
「ッ…後ろに居ろと言っただろ…!」
「だ、だって…ずっと固まってたから____」
鋭い目付きで睨んでくるディオから逃
げるように視線を目の前の相手へと映す
「新しく越してきた人、ですよね。も
しかして、ディオのお知り合いなんで
すか?」
「____ぁ、うん。知合い、になるのかなッ。えっ、と…君は名無しさん____?」
困惑の混じった声は酷く動揺し、綺麗
なエメラルドグリーンの瞳を大きく揺
らすと、私の名を確認する様に声に出
した様に感じた。
不意に言い当てられた自分の名に驚き
ながらも、ゆっくりと頷くと、困惑し
た表情から徐々に嬉しそうな顔へと変
わっていくのを見詰めながら、何故…
私の名を知っていたのか、そして私も
_______此の人の笑った顔を見た瞬
間、酷く泣きたく成った。
懐しさと不思議な想いが胸に押し寄
せ、「貴方の名前は?」と問い掛ける前
に、ディオが間に入るように私を背に
隠すと
「____挨拶はすんだ筈だ、引っ越して
来たばかりで荷解きもまだじゃあない
のか?」
「っちょ、ディオ……」
まるでさっさと出ていけ、と言うよう
な口振りにディオの腕を掴むが、ディ
オは視線を私に向けるも、直ぐに前を
向いた。
「____“今日は”そうするよ、またね名無しさん、さん」
「は、い……また。」
少しぎこちなく笑い、私に手を振ると
三人は帰って行った。
三人の後ろ姿を見送った後、私はチラ
リとディオに視線を向けなが
ら「さっきの態度は失礼じゃない?」
と、告げるとディオは鼻を鳴らし
「アイツに惚れたのか?趣味が悪いぞ、
名無しさん」
「な、誰もそんな事言ってない……!
客観的に見て、そう思ったから」
微かに頬に熱が集まるのを感じなが
ら、言葉を投げるとディオは真っ直ぐ
に私を見詰め
「アイツは、止めておけ。どうせま
た、名無しさんが泣くだけだ」
「またって、何それ…」
ディオは荒く私の頭を撫で回すと、
私の問い掛けには答えずに只、黙って
いるだけだった。