ジョジョ
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「____何て事、昔は有ったよね」
「っまた其の話を引っ張り出すのかお
前は」
苦虫を潰した様な表情を浮かべるディ
オに、クスクス笑いながら「懐かしい
ね」と続けると、ディオは肩を竦め私
の前に紅茶の入ったカップを置く。
「人形を取られて半べそかいていた泣
き虫名無しさんが懐かしいがな」
仕返しとばかりに私の思い出したくな
い記憶を引っ張り出すディオに、今度
は私が苦虫を潰した様に顔を顰める番
に成った。
其を見たディオは楽し気に笑っては、
「此であいこだろ」と目を細める。
紅茶を啜りながら内心、ディオに悪態
を吐くとディオは再度口を開き
「俺に口で勝つつもりか?」
「…嫌、勝てた事ないもの」
何度ディオの言葉に丸め込められただ
ろうか、数えようにも沢山有り過ぎる
のと、思い出したくない為、直ぐに首
を横に振る。
こうしてディオと仲良く成れるとは、
幼き頃の私には想像もつかないだろう
な、と思うと此の時間が愛おしく感じ
た……が、本人には黙っておこう。
「……(言ったらディオに鼻で笑われるも
の)」
「___今日は随分と外が騒がしいな、何
か有るのか?」
「ディオ知らないの?近所に新しい人が
越してくるって話」
「興味無いな、そんな事。近所に人が
増えるとストレスも増える」
苦々しく呟くディオは、外面だけは上
品な爽やか青少年を演じている。
良くもまぁ、器用だ。と思いながら再
度紅茶を啜ると、ディオは視線を外へ
とまだ向けていた。
今でも鮮明に覚えているのは、まだデ
ィオと出会って間もない頃___苛めっ
子二人に絡まれている所をディオが助
けてくれた。
しかし、去り際に告げられた言葉は今
も私の心に突き刺さったまま、抜けは
しなかった。
「っ、何で_______ぁ、いつ…が」
「ディオ?どうしたの?」
窓の外に視線を向けていたディオが、
困惑したような…微かに焦りの混じっ
た声で、聞取り切れなかった為、何事
かと私も窓の方へと駆け寄るも_____
「っお前は来るな」
あの日以来、見せる事の無かった切羽
詰まった表情を浮かべたディオと、玄
関のチャイムが鳴ったのは、ほぼ同時
だった。
「誰だろ、ちょっと私出てくるね」
「……俺も行く」
隣に並んだディオを上目に見詰めなが
ら、私はディオと初めて会った時に見
た、驚いたような…苦しそうな表情に
胸が締め付けられた。