出航!

□第九章 ノースブルー編
18ページ/18ページ

18

スノウの家に着いた。
中世の造りの地味な外観。
こんな家に住んでいたのか。
俺が買った家だったが、一度も来た事はなかった。




チリーン


出てきたのは、昔の仲間ミス・メリークリスマス。


「あ、スノウちゃん、お帰り…! ボス〜! に、アンドレさん!」
 

驚きすぎて、騒ぎだした。


「うるせぇ、静かにしろ。こいつを寝かせる。ベッドはどこだ?」

「う、上です」

「案内しろ」



部屋の奥から、金色の瞳が覗いていた。

金髪の双子がすごい速さでスノウに抱きついた。


「ママ!どうしたの?パパ、どうしたの? このおじさん誰」

「大丈夫。ちょっといろいろあってね」

「パパ、血、出てるよ!」

「うん、平気。大丈夫。この人はパパのお友達だから。あなた達は、少しノエルさんとお利口にしてて。お願い」

『分かった』(双子)

「フェルナンド。お願い!」



フェルナンドが、深刻な顔で出てきて、奴を背負った俺を見つめた。


奴をベッドに寝かせ、スノウが奴の手を取り額に当てた。
俺は、ノエルに食べるものを用意させるよう伝え、二人を見守っていた。


しばらくして


コンコン

「ボス、入ります」

ノエルの声。

「いいぞ」

「お食事を」


後ろから、フェルナンドがパンを持って付いてきた。

テーブルに、ワインと、カルパッチョとサラダ、シチュー、チキン、パンが置かれた。


「では、ごゆっくり」


ノエルが出て行った。
フェルナンドは、ドアの所に立っていてこちらをジッと見ていた。


「なんだ? 小僧」

「おじさんがパパを、やったの?」


聡明な眼差しが、刺すように俺に向けられた。


「どうしてそう思う?」

「おじさん強いから。」

「そうだな。それより、こっちへ来い」


黙っておれの所に来た。


「ご飯は食べたか?」

「うん」

「そうか、でも、少し付き合え」

「いいよ。でも、その前にさっきの質問にちゃんと答えて」


まっすぐな眼差し。賢いな。


「答えを聞いても、俺と付き合うか?」

「うん」

「そうか。
 お前の言うとおり、お前のパパをやったのは俺だ」


表情が強張り、唇を噛んで我慢してるのが分かった。
嘘でも“違う”と言えば良かったのか。



「ぼくのせいなのか?ぼくがさっき、攻撃したから」



瞳から大粒の涙がこぼれた。

こいつ、自分のせいだと思ったのか?




「……おまえのせいじゃないフェルナンド。屋根から落ちただけだ」


奴が目を覚まし、起き上がりヘラヘラ笑った。

!!屋根から落ちただぁ。



「良かった。痛いところは?」

「あ、無ぇな」

「パパ!」


フェルナンドが奴の胸に飛び込んで行く。

これが現実か…。


*
*
*





「俺は先に食うぞ!」


ボスがワインをグッと飲んだ。


「あ、」


フェルナンドが、駆け寄りボスの隣のソファーに座った。


「付き合うって、約束したからな」


ニッコリと笑った。



「ホッとしたらお腹すいちゃった。ボス、私も一緒に食べていいですか?」

「かまわねぇが」


ボスの向かいに座り、チキンをパクッとつまんだ。



「スノウ、俺も」


アンドレが、イトイトでヒョイっとフェルナンドの向かいのソファーに座る。


「元気そうじゃねぇか」

「まあな」


サーモンのカルパッチョを手でつまみ口に放り込んだ。
そのやり取りをフェルナンドは不思議そうに見て。


「おじさんとパパは、おともだちなの?」

(ボス&アンドレ)『違う!』


声が揃った。
フェルナンドは、変な顔で二人を見つめた。



「腹減って死にそうだった」


死にかけてたのに、急に食べ始めるアンドレに、少し疑いの目を向ける。
まさか、演技じゃないよねさっきの。


「スノウ、ノエルに、俺の分のグラスと、もっと食べもん持ってくるように言ってくれ」

「スノウとノエルは俺の部下だ! お前が行って取って来い」

「なに〜、うるせぇ鰐野郎」

「あのなぁ。お前をここ運んでやったのは俺だぞ!」

「誰のせいだ? ったく。相変わらずだな」

「あ〜もう、私が行きます! そんな事で喧嘩しないでください」






ガチャ……




ドアを開けると、そこには真っ白な世界が広がっていた。



「えっ、あれっ」



その場にいた、アンドレ(ド・フラミンゴ)、クロコダイル、フェルナンドはその異様な光景に目を疑った。




「おい、スノウ!」

「ママ…」



アンドレが手を伸ばすも、背中を押されたように前に倒れ込み、そのまま、白い世界に落ちて行った。






バタン




ドアの閉まる音が響いた。


次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ