出航!

□第六章 アラバスタ王国編
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PM5時

迎えに来たコーザさんと、私達は国王の面会場所の迎賓室に着いた。
テーブルに並べられた御馳走やお酒、国王のすぐ横の席にボスと私は案内された。
ボスの前には布がかかった大きなお皿?お盆?がある。

ビビ王女に、コーザさん、ペルさん、チャカさんも同席している。

ネフェルタリ・コブラ国王が話し出した。


「久しぶりだな、クロコダイル」

「あぁ」

「今回の事、私も良く考えた。お前のしたことは今も許せないが、この国の将来を思うと、そうも言ってられないのも事実だ」

「・・・・・」

「取り合えずだか、今回、墓の発見の御礼を」


布を取ると、棒状の金塊が20本ほど載っていた。
私は思わず驚いたが。でも、情報料とかいってスコーピオンの宝石持ってきちゃったけど。


「・・・・・・」


金塊を見てもボスの表情は変わらない。

「こんなものじゃ足りないと思うだろうが、この国の財政難はお前が居た頃とあまり変わらん。すまない」

「そんな事は分かってる。本題はなんだ?」
ニヤリと国王を睨んだ。

「そうだな、発掘の件は、コーザに任せようと思っている。コーザは、クロコダイル、お前にすぐにでも手伝ってもらいたいと言っておるが、どうだ?」

ボスは少し考え、難しそうな顔をした。
「以外過ぎて驚いたぜ。てっきりこの国に関わるなと言われるかと思ってたからな。そこのお嬢ちゃんは何て言ってる?」
顎でビビ王女を指した。

「ビビは、スノウさんが一緒ならいいと」

「悪いが、その条件なら無理だ」

「どうして?」
思わず私が口を出した。その私をスッと睨み諌めた。

「(私を見つめ)こいつは少々訳ありでな」

「訳は大体ビビから、聞いておる。いったい、誰に追われておるんじゃ」

「七武海ドンキホーテ―・ド・フラミンゴだ」

名前を出した途端、その場が凍りついた。
ボスが話し続ける

「この国に、そんな奴を呼び込みたくねぇだろ。俺もファラオの墓には興味があるが、先に、こいつの事を片づけてェ」


「そんな、スノウさん、ド・フラミンゴに追われてたなんて」


ビビ王女が悲しげな顔で見つめる。


「つまり、それが片付いたらいいんだな」

コーザさんが聞いた。

「あぁ、連絡を入れる」


「片づけるって? スノウさんは?」


ビビ王女がボスに聞いた。


「奴の手の及ばねぇ国に匿う」

「匿う?」


不思議そうな顔でボスを見た。



「そうゆうことなら仕方ないな。ビビ」
安心したようにほほ笑む国王。

「そうね残念だけど」


「よし、宴にしよう!」


ワインが注がれたグラスを国王が掲げた。
乾杯!!!


静かにワインを煽るボス。
ホッとしたような、すこし嬉しそうな満足げな表情だった。


「ピアノを一曲頼む」

ボスが私の目を見つめて言った。









スノウのピアノが始まると一同は息を飲んだ。
切ないメロディに、感情がかき乱される。俺は、平静さを装うも、驚いた。

ついさっき「離れたくない」と言うスノウを思い出した。
嬉しさもあったが、何もかも失う恐ろしさもあった。


気が付くと、別荘中のメイドや、執事たちも聞きに来たらしく、食事会場はコンサート会場の様になっていて、
1曲目が終わると、拍手が沸き起こった。

少し照れた感じで、スノウが皆の方を向いて微笑む。
国王と同席している俺を見て、皆ザワついていたがスノウのピアノが始まると、皆、そっちに注目した。


2曲目は、“Someday My Prince Will Come”

白雪姫の曲か。
甘いメロディに、王女の顔がうっとりしている。
スノウは、楽しそうに弾きこなす。


3曲目は
テンペスト
俺の好きな曲だ。

テクニックといい、表現力といい、ずっとこの空間に閉じ込められていたいと思うくらいだ。
何を想って弾いているのか、時折表情が苦しげだが、時折、フッと笑みがこぼれる。


テンポがいつもよりも速い。
ノリノリに楽しそうに弾く。
あぁ、こいつは……本当に……天才だ。


国王が

「素晴らしい」

「スノウちゃんのピアノ。本当にステキ!」(ビビ王女)

「ふっ」(クロコダイル)

思わず王女と目が合い

「あなたが、スノウちゃんを大切にしているのは分かってる。でも、あなたをまだ、許せないの」


睨まれる。

ひでぇ事をしたしなぁ、仕方ねぇか。

「これ、ビビ。」

国王が睨む王女を諌めた。


5曲目は
初めて聞く曲だった。

切なげなメロディだが、懐かしさが込み上げてくる、ピアノの旋律がたまらない。
あちこちからすすり泣く声が聞こえてくる。
王や、王女の頬に涙がこぼれる。
コーザも、チャカもペルも目を潤ませスノウのピアノに酔いしれていた。

スノウ。

おまえのピアノはなんなんだ。





曲が終わり、拍手が沸き起こった。
しばらくボンヤリ鍵盤を見つめ、肩で息をする。
どうした!?
声をかけようとすると、王女が駆け寄った。

「!すごいスノウちゃん!!!何て曲!?」

「あ、えっと、なんだっけ?
 う〜ん、川で溺れた女の子を、川の守り神の龍が助けに来るお話の曲なんです。」

「クハハハ……なんだそりゃ?」

呆れて思わず声に出た。

「えっと、なんだっけ?タイトル」

本気で悩んでいるみてぇだ。

「クハハハ……おめぇはまったく……バカなのか天才なのか。クハハハ」





こんなふうに笑うクロコダイルを、皆は不思議な目で見た。



「いいわ、スノウちゃん。ありがと」

「あ、はい。私こそ、こんな風にビビ王女と話せるなんて夢みたいです」

「何言ってるの?もう、グスッ」


ビビ王女がスノウを抱きしめ、泣き出した。

「あ、ビビ王女!?え、大丈夫ですか?」

「スノウちゃん、無事でいてね。絶対、また、この国に来て!」

「うん!」

スノウも目を潤ませた。


そろそろ潜水艦に戻る時間だった。


帰り際、ボスは金塊を国王に渡した。


「どうゆうことかなクロコダイル

「お前に、預ける」

「不服じゃったか?」

「いいや、今度、俺が来る時にまとめて頂く。それに(スノウの肩を抱き)こいつが、もしこの先、またこの国に来るような事があったら、こいつの為に使ってほしい」

「え?」(スノウ)

「そうゆうことならいいが、いいのか?クロコダイル」

「あぁ」


「ごちそうさまでした。楽しかったです」

「また、この国に遊びにおいで」

国王がスノウに微笑む。

「絶対よ!指切り!
 ゆ〜びき〜りげ〜んまん……」

ビビ王女と指切りをし、その場を後にした。










別荘を出て、スノウの肩を抱き馬車に乗り込んだ。
俺の腕の中で、ウトウトしだし港に着いた頃にはぐっすり眠っていた。

「起きろ、スノウ」

いつもの事だが、ピクリともしねぇ。仕方ねぇな。


抱き上げ潜水艦に乗り込む。
甲板では、熊を枕にトラファルガー・ローが待っていた。
俺たちを見て立ち上がり、熊をゆすった。

「悪い。夕刻と言っていたが、かなり遅くなっちまって」

「(スノウをみて)寝ちまったのか?」

「あぁ」

「国王とは、話がついたのか?」

「あぁ。だが、こいつをなんとかしてからだ」

俺の腕の中でスヤスヤ眠るスノウ。アラバスタの礼服を着ているせいか寝姿が色っぽい。
トラファルガーがスノウをまじまじと見ていたので、マントでサッと隠し、船室へ運び込んだ。







初めてこの船に来た時と同じように、スノウはクロコダイルに抱かれて眠っていた。
胸元が開いたドレスに、シースルーの長袖が逆に色っぽく、生唾を飲んだ。
すぐにクロコダイルのマントによって覆われてしまったが。
戻ってきた二人の関係が、何故か、少し変わったように感じた。
まさか…な。


「すぐに出航するが、いいか?」

「あぁ、出してくれ」

クロコダイルは、ニヤリと悪そうに笑った。









「ダズ」

眠っているスノウを見て、ダズは毛布を用意しベッドに寝かせた。



「ボス、いかがでしたか?」

「まあまあだ」

ニタリと笑う。
ボスのまあまあは大抵、いい事だ。


「ン…フフッ」

「寝言か」


呆れた顔でボスが呟く。
スノウの幸せそうな寝姿を見て、ホッとし、笑みがこぼれた。

楽しそうにビビ王女と出て行くスノウを尾行していたが、そこでボスと会い、王女に睨まれ、悔しそうに泣きながら船に戻ってくる姿に胸が痛んだ。
ユートピア作戦には、俺も参加していた。
俺達のせいでこの国は…。スノウが辛い思いをしていないかとにかく心配だった。


「そっちはどうだった?」

「変わりなく」

「そうか」

「ダズこれを」

ポケットから宝石を取り出した。

「どこで?」

「ファラオの墓だ。どうだ?」


一つ手に取り光に透かして見た。


「質も、大きさも、素晴らしい」

その中のひときわ大きなルビーを手に取り、

「ダズ、次の港に着いたら、このルビーをネックレスにしてくれ」

ネックレス。女用か?

スノウか?


「はい」


「お前はどれがいい?」

一通り宝石を見て、一番好きなブルーのサファイヤを選ぶ。


「これで」

「さすがだ、目が高ぇな。ダイヤじゃなくていいのか?」

「はい。ですが、スノウには」

「さっきのルビーだ」


やはりスノウ用か。







潜水艦が海に潜航した。

ゴボゴボゴボ・・・・

グランドラインを逆行する旅もそろそろ終盤を迎えていた。


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