出航!
□第二章
5ページ/5ページ
2-5
アサヒと戻ってきたダズは、見るからに疲弊しきっていて、部屋に入るなり、入って右側のベッドの上段で寝てしまった。アサヒも疲れた感じで眠たそうにしている。何をしてきたんだ?
「ボス、少し休みますね」
アサヒは、ダズの向かい側のベッドの上の段に上がりうつ伏せに倒れこんだ。
おいおい…。
「アサヒ、お前は下に寝ろ」
寝入りそうなアサヒを慌てて起こした。
「ええっ! ボスも上の段がいいんですか?」
「馬鹿か! おめぇは寝相が最悪だからだ。さっさと下で寝ろ」
「…ふぁい」
アサヒは素直に、もぞもぞと起きあがり、下の段に転がり込み、カーテンを閉めた。しばらくすると寝息が聞こえてきた。相当疲れていたようだ。
ガンっ!
数分後、足がベッドの柵を越えて飛び出してきた。足を戻しながらベッドを覗くと。案の定、何も被ってねぇ。それとも、かぶったのに毛布は足元に行っちまったのか………毛布をかけてやるが、ピクリともしねぇ。
「ったく…」
しばらくして、コックが夕食を運んできた。
二人があまりに、気持ち良さそうに寝ているようだから、起こすのはやめておいた。
(小声)こいつらは起きたら食堂に向かわせると、コックに伝え、夕食のシチューを食べ、ワインを飲んだ。
悪くねぇ。
その後、トラファルガーが今後の事について話したいと、部屋に来た。
「なんだ寝てるのか。夕食はちゃんと食べたのか?」
ベッドを覗き、頬を少しピンク色にして、ぐっすりと眠るアサヒを見た。寝像を見て少し驚いたのが見て取れた。無理もねぇ。
「寝ちまって、まだだ」
「あの出血量からして、かなり食べておかないと持たねぇはずなんだが、顔色も大丈夫だ。………この女どうゆう身体してんだ?」
「興味深いか?」
「まあな」
ニヤリと笑った。
ドアに寄りかかり、持ってきたビールをぐっと飲む。
「最初は、ヤべぇ奴と手を組んじまったと後悔したぜ。
(アサヒを指さし)こいつが本当に死んでいたら、俺はお前を次の港で降ろすつもりだった」
「そうか、そんなに意外だったか?」
「あぁ」
「だろうな」
「ところで、これからの事なんだが、新世界を出て、グランドラインを逆走し、カームベルトを超えイーストブルーに入る。問題は、イーストブルーからノースブルーに抜けると言ったが……本当にあるのか? そんな抜け道が……」
「ある人物から、昔聞いたことがあってな、とりあえず確かめたい」
「抜け道か……面白い。金さえ払ってくれりゃ、俺たちはまあいいが、この船やクルーたちに被害が及ぶような航路だったらすぐに引き返す、いいな」
「ああ」
「まあ、そのクルーたちは、お前のお陰で明日から上手い飯が食えると喜んでいる……俺もできるだけ手を貸す」
「フッ、お互い様だ!」
「済まねぇな。なにせ、王下七武海とは名ばかりの、この貧乏海賊団だ」
「海賊なんだ、略奪でもすりゃいいのに」
「クルーたちにに猛反対されンだ、仕方ねぇだろ」
「クハハハ」
「そういや、ベポから聞いたんだが、ダズとこの女もう、うちの団員達とかなり打ち解けてるらしいぜ(笑)」
「ダズがか?」
「肩組んでビンクスの酒を何度も歌っていたらしい(笑)」
「クハハハ!(アサヒがいる手前断れなかったんだな。)帰ってくるなり疲労困憊でこのザマだ。(笑)昨日から一睡もしてねぇから仕方ねぇか」
「明日、みんなを集める。そこで、この女のことをクルー達に話す。いいか?」
「あぁ」
「あ、そうだ。クロコダイル。 一応、医者として言っておくが、診察で解ったんだが。(小声で)この女“処女”だって知ってたか?」
「………」
思わず開いた口が塞がらなかった。
「じゃぁ」
軽く会釈しトラファルガーは部屋を出て行った。
立ち上がりアサヒのベッドを覗いた。
ド・フラミンゴには、本当に何もされてなかったと、安堵するも。処女であると言う事に頭を抱えざるをえなかった。助ける為とはいえ、また傷つけ、怖い思いをさせてしまった事を後悔した。そんな俺を、“ボス”と慕ってくれてはいるが、男としてどう思われているのだろうか。
昨晩、フラミンゴ野郎からキスされたと聞かされ、気に食わなかった。思わず抱きしめただけであんなに赤くなりやがって。
スヤスヤ眠る頬を右手でそっと撫でる。
「…ん」
起したか!?
アサヒは寝返りをし仰向けになった。
「んふふふ…」
幸せそうに笑った。
それからまた気持ち良さそうに眠るので、たまらなくなる。
「フ…」
先が、思いやられる。