出航!

□第一章 黒のテンペスト
18ページ/18ページ

18


部屋を見渡すと、ドレッサーやドレスの掛った衣装棚、ソファーセットに……、どれもこれもゴージャスな造りだ。
ベランダからは海の匂い。
ベランダに出て外を見渡すと、真っ暗な空に月が輝いていた。

ザザザ…
遠くから波の音が響く。

良かった。

明日、ボスのところへ送ってくれるとド・フラミンゴさんが約束してくれた。

また、怒られるだろうな。
あれから、どれくらいたったのだろうか?




「おい、おまえ」

子どもの声!
びっくりして振り向くと、さっきのビームの男の子がドアの隙間から覗いていた。身長は120センチぐらいかな、短い黒髪にクリクリとした目がかわいい。

「こんばんは、夢之介くんだっけ?」

ビクッとしながらも私の側まで来た。なんか怒ってる?

「お、おう、おまえ。若を振ったのか?」

この子、覗いてたのかな?
キスの時、居たよね。

「覗いてた?」

「若の事、嫌いか?」

上目遣いがかわいい。

「嫌いじゃないよ」

「じゃあなんで若を泣かせたんだ」


しゃがみ込んで、夢之介と視線を合わせる。


「私、ド・フラミンゴさんの事良く知らないの、だから、怖くて……かな」

「そうか!」

「わかってくれた?」

「俺もはじめはそうだったから!」


ニッコリと笑った。


「夢之介君は何歳?」

「8歳になる。なあ、おまえの夢で聞いた、ピアノもう一回聞きたいから、弾いてくれるか?」


私の手を取った。


「そっか、夢之介君、夢の中に入れるのよね! すごいね!」

「そ、そんなことねぇよ」


赤くなった。かわいいい。


「それより、行こう!」



私の手を取り走り出した。部屋を出ると、これまた天井の高い、広い廊下が続いている。蝋燭の明かりが奥まで明るく照らして、床のタイルが美しく光っている。いくつかのドアの前を通り、角を曲がると大きな階段があった。二つの階段が真ん中ぐらいで一つの大階段になっている。テレビでみるようなお城の階段だ!
見た感じ、白い大理石でできていている。
階段を下りるとそこは大広間、誰も使ってないせいか明かりはほんの少ししかともっていない。
外から月の光が差し込んでいる。
薄暗がりの広間は神秘的で、壁に鏡が張り巡らされて、美しい天井画に、豪華なシャンデリア、まるで宮殿みたいだった。その奥にグランドピアノがドーンと置かれている。



「あの、夢之介君、こんな夜中に弾いたりして大丈夫なの?」

「うん、問題無い。1曲たのむ」


“問題無い“ってまったく大丈夫かな〜。


「なにがいい?」

「おまえに任せる!」


近くの大きなソファーにちょこんと座った。王様気どりはド・フラミンゴさんをまねたのかな。


「じゃあ、いきますね」

♪〜ショパンのノクターン

♪〜〜〜


夜想曲

静かなメロディー

子どもの頃この曲を聴くと、どこかのおとぎの国に行ったような感覚になった。
ちょうど今みたいに!


夢之介君は、目を閉じ聞き入ってる。




〜〜〜〜〜♪

曲が終わると、


「この曲いいな、なんかこう、ふわっとして、もう一曲!」

かわいい、じゃあ、これなんかはどうかな

「夜だから、静かな曲ね」

「まかせる」

♪ベートーベン 〜月光〜



外から差し込む月の光。
ド・フラミンゴさんのキス。

あの人には底知れない闇が隠されている。闇が、闇がド・フラミンゴさんをのみこんでしまわないように、夢之介君みたいな子が側に居たりするのかな?



あぁ、ボスにも闇はある。
でもその闇は…。


〜〜〜〜♪


弾き終わると、夢之介君は眠っていた。
頬をちょンとさわると“ん〜〜”と寝返りをした。

かわいい〜

思わず微笑んでしまう。風邪をひかせたら大変なので、自分の羽織っていた肩かけを夢之介に掛けてあげた。








「もう一曲たのむよ。お嬢さん」



大広間の暗闇の中から声がした。



















クロコダイルとダズは、港町から北西に1キロほどの孤島に建てられた大きな城に向かっていた。
そこがド・フラミンゴのお気に入りの城であることを、何度か招待を受けていたクロコダイルは知っていた。元監獄だった経歴を持つその城には、よく天竜人も多く出入りしていた。奴らの見世物になっていやしないか。悪い予感だけが頭を駆け巡った。クロコダイルはただ、アサヒの無事だけを祈っていた。



















【ド・フラミンゴの城】


「!?」

壁の隅に置かれたソファーから、見覚えのある影がゆっくり起き上がった。
気付かなかった!
アイマスクを上げて目をこすっている。

青 キ ジ!?

ド・フラミンゴさんの城に、なんでいるんだろう?
ド・フラミンゴさんにクロコダイル
こんな大物が接触したことで彼も動き出したのかもしれない。

「驚かせたかな?」

「あ、は、はい?」

「あ、いえ、旅行でね、ちょっと寄っただけだから。きみのピアノ素敵だねぇ〜もう一曲たのむよ」


頭を掻きながら催促した。旅行?

「う〜ん(考え中)はい。なんでもいいですか?」

「かまわねぇよ」


と、アイマスクを付けまた横になった。


〜〜〜〜♪
ジムノペティ1番




 
夜、闇にまぎれて恋人に会いに行くような感じの曲
恋人に会うまで不安と期待が入り混じる

大人な曲

と思って私はいつも弾いている。
楽譜には、“いたましげに“弾くように書かれているけど。


〜〜〜♪
曲が終わる
ZZZZZZZZZZZ

寝てるし!




「はぁ〜」

長いため息。登場人物が曲者ばかりで疲れるんですけど。

ま、いいか。私もそろそろ、
ピアノの鍵盤カバーをかけ、蓋を閉めて立ちあがろうとすると冷気が肩に! 
青キジが後ろに立っていた。


「うゎ!!! あの、驚かせないでください」


振り向いた。
うわ背大きい。

青キジはしゃがみ込んで視線を合わせてきた。


「ド・フラミンゴのキスはどうだった?」


直球セクハラ。


「見てたんですか?」

「ド・フラミンゴの様子じゃ最後までやっちまうと思ったのにな」

いやらしく笑った。


「何をですか?」

「何ってあれだよ、あれ、大人のね。ところでおまえ、クロコダイルの部下だろ」



何で知ってんだろ?


「はい、よくご存じですね」

「なぜクロコダイルがお前を側に置いている」


きっとあの力の事だと思ったが言えない。


「あ、それに………知らねぇんだろ、その、おまえのピアノ」


ピアノのことがそんなに重要なの?


「ダズ・ボーネスは知っていいるのに、なぜだ」


ダズの名前まで。これは言ってもいいかも。なんか話が見えない。


「秘密にして、驚かそうと思ってたんです。ボスを。バレちゃったけど」


私の素直な答えに、こわばった青キジの表情が一変! 
いきなり笑いだした。


「アハハハハハ…
  ヒィ……ハハハ…そうゆうことか! なんだ…アハハハ…」


床にころげまわって、なんかすごい笑ってるんですけど。


「何がおかしいんですか?」

「いや、何でもない」

「ちゃんと言ってください」

「はいはい。君は君のボスとちゃんと話をするのか?」

「うん、まあ、でも最近、人探しで忙しそうで」

「だろうな、クククク…(笑いをこらえている)今、君のボスがこっちに向かっている。ちゃんと君の口から話すんだ。いいね」


頭に手をポンとのせて、なでなで。


「え、ボスが! でも…」


ボスが向かっている、と聞いて嬉しくなった反面。またド・フラミンゴに連れ去られた事を、ボスはきっと、咎めるであろう。


「そんな顔してないで、早く寝ろ」


床にあぐらをかいてこっちを上目遣いで見た。


「うん、あと、夢之介君も連れて行きたいですけど。ちゃんとベッドで寝かせた方がいいわよね」

「よ〜し」

立ちあがって青キジは、夢之介抱こうとして触れると、青キジの冷たさに夢之介が起きた

「な、何者だ!」

飛び起き、ビームを出しそうな勢い。

「あらら、起きちゃった」

両手を広げ、降参のポーズをとった。

「なんだ青キジか、いたのか?」

「ずっとね」

頬笑む。知り合いなんだ。

「夢之介君、部屋に戻って一緒に寝よ」

手を差し出すと、手を握ってきた。やわらかい小さな手。

「うん。いくぞアサヒ!」

もう呼び捨て。本当、かわいいな。

「それじゃあ、青キジさん、おやすみなさい」

青キジは手をふって返事をした。

いったい何がそんなにおかしかったんだろう。














城の最上階の塔の上。
頭を冷やすにはいい場所だ。満月を見ながら寝っ転がった。

風にのってピアノの音がかすかに聞こえてきた。
そら耳かと思ったが、アサヒだ。優しいメロディー。

そういや大広間には青キジが寝ていたな。

アサヒが弾く曲はどれも心に響いてくる。

あいつの心を響かせるには何が必要なんだ?あいつの求めているものは何だ?





次の曲が聞こえてきた

〜♪
月光ソナタ

静かで情熱的な調べに聞き入っておぼれていく……
あぁ、この時間を止めたい


“アサヒを、あいつのもとに帰したくない”




「やっぱりいいねぇ〜。 
       フッフッフッ」




しばらく沈黙がつづいた
終わりか?


〜♪
ジムノペティ1番




デンデン虫を手に取り

「おれだ、 船を、頼む。
あと、朝までにドレスと……を頼む。」

電話を終えると、ピアノのメロディーに聞き入った。




そうしているうちにピアノの音は止み、ド・フラミンゴもいつの間にか眠りに落ちていた。



















アサヒの部屋の前。広い廊下に寝そべる影。



プルルル、プルルル…
青キジのでんでん虫が鳴った。


「はい」

「おうクザン殿か?」

「あ、藤寅さん。あのお嬢さんは無事ですよ」

「そうか良かった〜」

「一時は危なかったけど、何故か手を引いたんだ」

「手を」

「あぁ、で、こっちにはいつ来ます?」

「クロコダイルを追いながらじゃ、もう少しだ」

「おれは、このまま、ここであのお嬢さんを警護します」

「あぁ、頼むよ。青キジ殿。あと、一般人はどれくらいおるんじゃ?」

「そうですね。オフシーズンで、城の中にはド・フラミンゴの部下3名
使用人たちは城の城壁の外に待機しているものがおおく、日中しか城には入らないように決められているが、
人数は、料理人5名に執事が10名にメイドが10名庭師が5名です」

 「そうか、戦闘になったらすぐに救助出来るようにせんとな」

「そうですね」

「軍艦を1隻呼んでおく」

「はい、は〜い」


受話器を置き、あくびをする。


次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ