出航!

□第十一章
3ページ/14ページ




朝食の後、カタクリさんを診察するため、ロー船長がブリュレさんと、なぜかダズとノエル(ミス・メリークリスマス)と現れ、ますます部屋の中は賑やかになった。

ダズは、私と目が合うなり微笑み、

「元気そうでよかった。…なんであんな奴と結婚したんだ」

とため息をついた。

「同感だ」

ロー船長が舌打ちをしながら通り過ぎ、ノエルは、

「スノウちゃんな〜んにも言わないから、驚いちゃったわよ!!」

と抱きしめながら叫んだ。

ダズは、昨夜のことを怒っているのか、夫を見つけるなり、手刀で襲いかかった。
アンドレは、それをひらひらとかわしながら
「ダズ、悪かった、反省してるって…」…謝罪の言葉を並べるが、

「うるさい、お前は信用ならない」

ダズの猛攻で壁に追い詰めたが、ボスに止められ残念がっていた。


ブリュレさんが、カタクリお兄ちゃんの様子を見てくると鏡に入ろうとすると、部屋の壁がドアに変わり、カタクリさんが現れた。


表情は少し堅く、私たちを無表情に見下ろした。

「身体は大丈夫ですか?」

と伺うと、カタクリさんは胡坐をかき、深呼吸をし、安堵したように微笑んだ。


「このとおりだ、お前のおかげだ。スノウ、よかったな、家族と再会できて」

「はい、色々ご心配お掛けしてしまって、カタクリ さんにはどう御礼をしたらいいのか…」

「礼を言うのは我々の方だ、スノウ、お前が居なかったら、トットランドは、開国出来なかったかもしれん」

「また、そんな大袈裟な」




「少し、いいか」

ロー船長が険しい顔でカタクリ さんを見上げた。



「手足は大丈夫だな。痛むところはないか?」

ロー船長の突然の問いに、カタクリさんは淡々と答え、診察がはじまった。
双子の娘たちは、ボスに何を言われたのか、二人おとなしくソファーに座り、カタクリさんをキラキラした目で見つめている。


「あとでぺロス兄ぃさまが、みなさんを呼んで、お茶会をしたいと言っていたわ、いいかしら?」

ブリュレさんは、ロー船長とグールド先生の治療の終了を伝えにホールケーキ城へ出向いたところ、ちょうどぺロス国王のところに、入国の手続きでダズとノエルが来城していて、ロー船長と顔見知りだったノエルにからまれ、知り合いなら…と、みなさんでお茶会はどうかということになったらしい。


「じゃあ11時に迎えに行くわね」

「もう行っちゃうの? うん、お茶会の準備と、あと、グールド先生のお見舞いでウィリアム君に呼ばれてるから」

「私もグールド先生のお見舞いに行きたかった」

「あとでゆっくり行きましょう、元気すぎて驚くから」


ブリュレさんは、にっこりと笑い、手を振りながら鏡の中へ消えていった。
ロー船長の診察が終わり、カタクリさんがソファーに座ると、待ってましたとばかりに娘たちがカタクリさんの両隣に座った。


「カタクリさん、すみません。子供たちが…」

「かまわぬ。聞いてはいたが、賑やかな家族だな」

「フフフっ、この子達、この前のコンサートの映像を見て、カタクリさんのことすごく気に入ってしまったみたいで……」

「気に入ったとは…?」

「"けっこん" するみたいですよ、フフフっ!」



「なんで、ママないてたの?」


私に抱きついているフェルナンドが、不安そうな顔で聞いてきた。


「だいじなコンサートだったから、緊張したのと、あと、おなかすいて……」

「おなかすいて!?」(一同)

「カタクリさんにマカロンを貰うまで、前の日から全然食べていないことに気づかなかった」

『マカロン!』(双子)

娘たちはテーブルの上のマカロンタワーをジッと見つめた。

「ママ、頑張ったんだね」(フェルナンド)

「うん、みんなが見てくれるかもしれないって」



ボスが、痺れを切らしたのか、咳ばらいをした。

「スノウ、話がある。ノエル、ダズ子供たちを頼む」












将星カタクリが部屋に来るなり、アンドレ(ド・フラミンゴ)が避けるようにベランダへ行った。
極力、幹部たちとの接触は避けろと忠告すべきだったと考えていたが、やけに気が回るじゃねぇか。
ようやく立場ってもんを理解できるようになったのか、アホ鳥め!
診察を終えたトラファルガーは、壁際に座り、昨夜の件で寝ていないのか、眠たそうにあくびをした。
スノウには興味もなく、面倒臭そうな顔をしているが、恐らく、こいつもスノウがこの国にいると知って、駆けつけたに違いない。

スノウと将星との会話から、どうやらカタクリという男は、この国でのスノウの後見人的な立場なのだろう。スノウが、この国に来た いきさつも知っているのかもしれない。
退席しようとした将星カタクリを引き留め、事情を話すと、将星も同じような疑問を口にした。


“白い世界”

「あれは何だ」

スノウは、深呼吸をし、俺の方を見つめ話しはじめた。


「“エドガー卿“初めて会った日の事、覚えてますか?」

「…ああ」

「あの日、私は、私の世界で死んだのかもしれません」


俺たちは顔を見合わせた。



「お前の世界?」



驚いた顔のアンドレ(ド・フラミンゴ)が、飛んできてスノウの隣に座ると、スノウはその手を奴の膝の上に置き、“大丈夫”と笑った。


「私は、実は、別の世界から来たんです。


あの日、私は、旅行先のホテルのベランダから落ちて、気づいたらあの白い世界にいたんです。白い堅い地面が永遠と続いていて、誰もいない世界。
時間もなくて、お腹も減らないし、全然疲れない。だから、ここが天国かと思っていました。そこでピンク色のドアを見つけ、扉を開いたら、エドガー卿、あなたに会ったあの国だったんです」

「“ピンクのドア“か。以前にも聞いたが、理解に苦しむ。だが、”別の世界”とはどうゆうことだ」

「多分、言っても信じてもらえないと思って、黙ってたけど、私は、ボスやダズやアンドレ、ロー船長やカタクリさん、ぺロス国王や、あなたのお母さまシャーロット・リンリンさん、この世界に来るずっと以前から、みなさんの事を知っていました。この世界は、麦わらのルフィさんが主人公の、ワン…ウグっ‥‥
「やめろスノウ!」


将星カタクリが青ざめた顔で指から餅を飛ばし、スノウの口を塞いだ。


「…スノウ、どうゆうことだ」(カタクリ)

「どうした!?」(アンドレ)

「俺には少し先の未来が見える。おまえが、言っていることは本当なのか!? スノウ、お前が消えてしまう未来が見えた」

「消えるだと!!!」(アンドレ)

「砂のように…」

「お前か!?」

俺の方を睨みつけるが、

「できるか!? こいつの力を知ってるだろ」



“別の世界“


一概には信じがたいが、スノウに対する違和感。


あいつは俺を昔から知っていた!?
麦わらのルフィだと!?
アラバスタの件で、やけにビビ王女に肩入れすると思っていたらそうゆうことか。
ダズやトラファルガーともすぐに打ち解けた。あのクマを見ても驚かねぇから、変わった奴と思っていたが、以前から知っていたなら話は別だ。
なぜ知っている?
どこでその情報を入手した?




「もういいスノウ」

アンドレがスノウを抱きしめた。


青ざめた将星カタクリが何を思ったのか、立ち上がり、鏡の方へ歩き出した。


「どうした」(アンドレ)

「“本に閉じ込め、時間を止める“そうゆう能力者なら心当たりがある、図書館に行ってくる」

「将星カタクリ、俺たちも調べたいことがある、同行可能か」

「ああ」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ