出航!
□第六章 アラバスタ王国編
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砂漠の中を、疾走するカメ。
いったいここは、アラバスタのどのあたりなのだろうか?
さっきまで見渡す限り砂だった景色に、輝くような緑が見えてきた。
私たちは、湖を囲むようにヤシの木がまばらに生えた、小さなオアシスに、たどり着いた。
カメに餌をやり、休憩をとる。
ボスは持ってきた宝石を手に取り光に透かして見て、それから、地図の文字の所に載せ空かしてみたりしている。
これは! 暗号的な何かが隠されてる、と思い聞いてみた。
「何してるんですか?」
「宝石が本物かどうか見ている、透明度と屈折率だ」
「解るんですか?」
「俺を誰だと思ってる」
宝石を私に投げた。
「わ、わっ!」
慌てて掴むと。
「見てみろ!」
丸く(ブリリアンっぽい)カットされた、真っ赤な石が、光に当てると夢のように輝いた。
この石は恐らく“ルビー”で、しかも、大きい!
「キレイです」
他に言い方も見つからず、ありきたりな言葉にボスはフッと笑った。
「当たり前だ。……その大きさで、透明度も高い。それ一つで2000万ベリーはするだろう」
「に、2000万!!!」
「何、驚いてる。こっちはエメラルドだ! この大きさだ、どんな値が付くか楽しみだ」
さっきのルビーよりも、大きく緑色に輝くエメラルドを見せた。
「もう〜、いいんですか。持ってきたりして」
ボスにルビーを返す。
「墓の場所を教えたろ、情報料だ」
嬉しそうに笑い、ポケットに戻し、次の宝石を調べ始めた。
沈黙が続いた。
昼下がりのオアシスの心地よい暑さと、乾いた風が気持ちいい。
ヤシの実が落ちて小さな湖に浮いている。
湖の周りを散歩した。小さな湖は、一回りしても5分もかからない。
木々の間からは、見渡す限りの砂漠。
雲ひとつない青空。
私は、誰もいない砂漠の真ん中で、こうして、ボスと一緒に居られる奇跡に気付かないでいた。
宝石の鑑定を終え、ボスは立ち上がり空の様子を見る。
いちいち画になるボスに、思わず見とれてしまう。
「スノウ、行くぞ」
「はい!」
カメに乗って砂漠を進む。夕日が沈む砂漠の景色。
何もない、けどそれが美しい。
日が落ち少し冷えてきた。
Tシャツにビビ王女から借りた薄いマントだけでは、やはり寒かった。
カメのスピードを落とし、ボスがマントを広げた。
「冷えてきたろ」
うなづき、ボスの身体に身を寄せ、マントにくるまった。
温かい。
「もう少しで着く」
日暮れの闇が近づいていた。
野宿はオアシスではなく、また、砂漠の真ん中だった。
どうして?と聞くと。
「逆に何もねぇ方が、安全だ。虫とかダメだろ」
なるほど。
ボスは私を敷物に座らせ、マントを羽織らせた。
スラリとした黒のYシャツ姿で、固形燃料で紅茶用のお湯を沸かす。
「スノウ、紅茶を入れろ」
私が紅茶をいれると、マントに一緒に入った。
「上着とストール、あの墓に置いてきちまって悪かったな」
「平気ですよ」
「やけに素直じゃねぇか。もっと喚くと思ったが」
ため息をつく。
「素直じゃいけませんか?」
ボスの顔を見る。焚火に照らされた横顔が、かっこいい。
薄い唇がカップにふれ、紅茶をグッと飲み干す。
「どうした?」
「あの」
「なんだ、早く言え」
「アラバスタに来た目的って、この国を、その心配して…」
「墓のことか」
「はい」
「概ね、目的は資金調達だが。この国の王は、砂漠に埋まってる莫大な資源を知らずに、財政難だと喚いている。少し、教えてやろうと思ってな」
「優しいんですね」
「フン…欲しいものは奪う。それだけだ」
「私は、てっきり…」
と言った後で、はっとした。
「“てっきり“なんだ?」
「あ」
「国でも奪うと思ったか?」
「い、いえ」
目を逸らすと、鉤づめで顔を戻される。
「嘘はいけねぇな」
「はい、そう思いました。すいません」
私が、困った顔で謝ると。
嬉しそうに、フッ…と笑った。
手を放し、空を見上げ、煙をフッーと吐く。
夕食は、ジャーキーと缶詰スープの簡単な食事。
「これ、何の肉ですか?」
「さあな」
そう言われると、もう会話が続かないのは、まあいつもの事で。
トマトスープの缶詰に手を伸ばす。スープにはパスタのペンネが入っていて嬉しくなり。
「おいしいですね」
言ってボスを見れば。
「そうか?」
もう食べ終わり、私を見ていたらしく、少し驚いた顔をした。
「ボス、食べるの速っ!」
「お前が遅せぇんだ。さっさと食え」
「はい」
せかされながら食事を済ませた。
ボスはマントから出て辺りを少し歩いていて、時々、砂の刃の“ザシュ“という音が聞こえた。
私は、寝袋をカメさんから降ろし、敷物の上に広げて入った。
うん、温たたかい。
寝袋だけでもあって良かった!
「……サソリですか?」
戻ってきたボスに聞くと。
「蛇だ。やつら夜行性だからな」
「へび!」
絶句。
「どうした?」
「…………」
「怖ぇのか」
「(うなづく)……」
「……しょうがねぇな」
マントを羽織り、私の横に寝そべった。
顔近!!!
「………………スノウ」
金色の瞳が射るように私を見つめた。
「はい」
ボスの瞳に、焚火の日が映り込み、より綺麗な輝きを放つ金色に思わず見とれた。
そして、その金色の瞳が伏せられると同時ぐらいに、唇が塞がれた。
ボスはすぐに唇を離し、私を金色の目でじっと見つめた。
「あ……」
見つめ合いながら、言葉を探すも声が出ない。長い沈黙が続いたように感じた。
先に沈黙を破ったのはボスで、ニヤリと悪そう(あくまでもスノウから見て)に笑った。
「そんな顔しやがって。これはお前にやる」
寝袋に入った顔の横に、キラキラとたくさんの宝石が落とされた。
「え!?」
「おまえが欲しい」
私が驚いた表情をすると、ボスは私の上に跨り、頭を撫でながら、ガブッと口を塞ぎ、濃密なキスで私を襲った。
生憎な事に寝袋に入ってるせいで抵抗もなにも出来ない。
手も足も出ないってこうゆう事!?
というか……どうゆうつもり!?
ボス!?