小説(Sengoku)

□ショコラな時(雑賀孫市)
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「う〜ん・・。」

珍しく早起きをした孫市は、布団の上で大きく伸びをした。障子の隙間からこぼれてくる朝日に、天気が良いのがわかる。ゆっくりと起き上がり、障子を開けた。思ったとおり、外は久しぶりの快晴だった。

「・・日頃の行いが良いからな!」

にやりとしてまた障子を閉めた。その物音に一緒に暮らしている澄礼が、不思議そうに現れた。

「あら?・・今日はずいぶん早起きなんですね。」

「あ・・ああ、ちょっと用があってな。」

いぶかしげに見る澄礼の視線を避けるようにして、孫市は答えた。そして背中を向け着替えを始めた。

「朝飯、もう食えそうかな?」

「・・ええ、準備出来てますけど・・。」

何となく怪しさを感じながらも、澄礼は着替えを手伝っている。こんな風に共に生活を始めてから、もう半年が過ぎていた。孫市の、女性への強い関心事も落ち着きを見せ、澄礼と穏やかな暮らしをしている事は、孫市を知る回りの人々にとっても驚きだった。

「じゃあ、出掛けてくるよ。」

朝食を食べ、孫市はにこやかな笑顔で家を出た。背中に澄礼の視線を感じたが、気づかない振りをした。

悪いな、澄礼。今日だけは行かないとな・・。

山を降りながら、次第に顔がにやけてくる。はやる心を抑えて、孫市は京へと足を進めて行った。
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