小説(Sangoku)
□犯人は・・私・・?(陸伯言)
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・・もういい加減にしてよ!!
ベッドの中で、美紅は頭から布団をかぶった。それというのも、外から聞こえる話し声に眠りを妨げられ、もうかれこれ1時間が経っている。時計を見るとAM2時半だった。エアコンがあれば窓を閉められるのだが、それがない為うるさかろうが虫が入ろうが、窓を開けないと暑くて寝られない。
「・・・もう我慢できない!!」
起き上がり、美紅は網戸を開けて外を見た。きょろきょろと辺りを見回すと、少し離れた電柱の影にしゃがみ込んでいる人影が見える。20歳前後の男女5人のようだった。美紅の開けた網戸の音に気づき、じっとこちらを見ている。
「・・やだあ・・。ふふっ・・。」
「何あれ・・?」
小声で言っているのだが、夜のため辺りに響く。そしてまた、美紅の視線を忘れたようにじゃれ合ったり派手な嬌声を上げたり、全く周りの迷惑を感じていない。だが相変わらず美紅が睨むように見ているのを感じ、ようやく足早に立ち去って行った。
「・・・・全くもう、何時だと思ってるのよ・・。」
ぶつぶつ言いながらも、ようやく静かになったことにほっとして、美紅はゆっくり網戸を閉めた。そして、再びベッドに横になった。
* *
「ちょっと、聞いてよ!」
翌朝、仕事に出た美紅は同僚の千也子に愚痴っていた。寝不足の赤い目をして口を尖らせている美紅を見て、千也子は気の毒そうな顔をしている。
「・・・ふ〜ん、それで今日はお弁当なしなんだ。」
お茶を入れながら、千也子は美紅の話を聞いている。コンビニ弁当を頬張りながら美紅は、改めて憤慨していた。
「それでね、それから寝ようと思ったんだけど、変な夢ばっかり見てさあ・・。結局、寝たような寝れなかったような・・なのよ。」
「どんな夢?」
「・・・海みたいな湖みたいなとこにいる夢・・。何してるかはわかんないんだけど。」
「ふ〜ん・・。」
それにしては、食欲だけはあるんだ・・。
千也子は美紅のそのバイタリティに感心しながら、警戒の言葉を並べた。
「でもね、気をつけないと。報復・・なんてないとは言えないよ!」
「ちょっと!脅かさないでよ。」
「だって、家がばれてるわけだから・・。チャイムが鳴って玄関開けたら、グサッ・・・な〜んて・・・。」
千也子はナイフで刺す真似をしてみせた。その仕草に、美紅は絶句する。最近のニュースでは、似たような事件が多々起こっている。自分の身に起こらないとは断言できない!
「・・き・気を付けるわ・・。」
顔を青ざめ箸を持つ手を止めた美紅だったが、それも一瞬で、お茶を一口飲むと気分が変わったかのようにまた食べ始めた。
・・・まあ、こういう人には何事も起こらないのよね〜。
千也子は呆れながらも、自分の事ではないので同じように食べ始めるのであった。