読み物
□いつもと違う場所で……
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「………んっ……!」
朝日が差し込む鬼灯の執務室に、僅かに響く少年の甘い声。
「エドワードさん。今日の報告はどうですか?」
一本角の鬼が少年の素肌を撫で回しながら、少年に尋ねる。
尋問を持ちかけられた少年は、快感に飲み込まれそうな身体を必死に抱き締めると、ふーっと小さく息を吐き、途切れ途切れな声で鬼に説明をした。
「……っあ、れ、錬金地獄は異常なし……んっ……! その他も……あっ!」
鬼灯の膝に跨がり、僅かに栗色が混じった金髪の少年は大きく身体を震わせると、鬼灯の着物を強く握りしめた。
彼の名前はエドワード・エルリック。
最年少国家錬金術師の資格を持つ錬金術師。
数年前に突如。地獄へとやって来た異国の訪問者。
鬼灯とは恋人同士である。
対する一本角の鬼の名前は鬼灯。
閻魔大王第一補佐官の鬼神である。
エドワードとは恋人同士である。
「その声。かわいいですよ。エドワードさん。もっと啼いてください」
「……るっせぇよ! っああ!」
「その言葉づかいはいただけませんね」
鬼灯は少しだけ眉を寄せると、無意識のうちに暴言を吐いてしまったエドワードの首筋に勢いよく噛みつく。
「……いっ……!!」
ピリッとした鈍痛が首に走り、エドワードは小さく呻く。
牙が皮膚を食い破り、一筋の血がエドワードの肩から胸元をゆっくりと伝う。
痛みに堪えながら、エドワードは鬼灯を睨み付けると、お返しと言わんばかりに鬼灯の首筋に勢いよく噛みついた。
「……鬼と人間では力の差は違いますよエドワードさん」
はっきりと言われてしまい、エドワードは悔し涙を浮かべると、鬼灯の肩口に目線を落とす。
鬼灯の肩口には、歯形もなにも付いていない。
それどころか、血すら出ていなかった。
改めて知らされる人間と鬼の力の差……
これが人間と鬼の差かと、エドワードは改めて実感した。
「……ううっ……鬼には効かないか……」
涙目になりながら、エドワードは鋭く、鬼灯を睨み付ける。
鬼灯はそんなエドワードに対し、「そんなの効きませんよ」と軽く返すと、エドワードの胸元に赤い華を散らせた。